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運営者:パプリカ
・板前一筋22年
・ふぐ免許保有
・料亭、ミシュラン店、会員制クラブ勤務
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陶磁器の歴史・有名作家の基礎知識【板前なら知っておきたい】

新人の板前

器のことなんてわかりません……

先輩の板前

ぼくも若い頃は知らなかったけど、勉強してみると意外と面白いよ!

沢山の種類のある和食器は、長い歴史で何度も発展し、多くの職人が作ってきました。料理と器は切っても切れない関係で、板前にとっても馴染み深い商売道具の一つです。

この記事を書くのはプロの板前!

  • 板前一筋22年、料理長経験
  • 東京都ふぐ免許保有
  • 都心の料亭やミシュラン獲得店、会員制クラブなどに勤務

 【詳しいプロフィールはこちら】

特に陶磁器は高温の窯で粘土を焼くことから「焼き物」とも言われます。

中国大陸から伝わり、日本での進化は輸出によって、西洋器にも影響を与えました。

たまには直接的な料理から離れ、気分を変えて器の勉強をしてみましょう。

目次(INDEX)

日本の陶磁器の歴史と六古窯

ぼくらが日常的に器を使わない日はないほど、普及しています。その器の歴史を簡単に振り返ります。

  • 縄文時代 16,000年前の最古の土器が青森県で発見されています。
  • 古墳時代(5世紀~) 中国や朝鮮半島から新しい製陶技術が伝わり、高温焼成で杯、碗、盃、壷などを生産されました。
  • 平安時代(8世紀末~) 釉薬を用いた製法が広まり、各地で特色ある焼物を生産されました。
  • 鎌倉・室町時代(12世紀~) 「茶の湯」の影響で織部などの茶陶が生まれ、磁器の黄金時代を迎えました。
  • 江戸時代(1610年代~) 有田焼が誕生し、酒井田柿右衛門により色絵技法が完成され、ヨーロッパへ輸出。東洋で発展した磁器の技術は西洋のマイセン、ロイヤルコペンハーゲン、ウェッジウッドなどにも影響を与えました。

《MEMO:釉薬とは?》
焼成前の素地に塗る薬品で、焼成によりガラス質となり光沢が出て、水の浸透を防ぐ効果があります。

【六古窯】1000年続く日本の窯

【出典】旅する、千年、六古窯

六古窯(ろっこよう)とは、古くから日本国内にある陶磁器窯のうち、中世から現在まで、約1000年生産が続く代表的な6つの産地の総称です。

日本を代表する陶磁器の歴史が凝縮され、各産地で特色ある焼き物が発展していきました。

【越前焼】(えちぜん)福井県越前町

  • 平安時代の北陸最大の須恵器窯。
  • 土と灰釉が特徴。
  • 原料の赤土は鉄分を多く含み、焼き締まりが良い。
  • 素朴で温かみのある風合いで灰釉や焼締がある。釉薬のかかり方や焼き上がりの色合いによって、油滴、藍染め、黒織部などと呼ばれる。

※須恵器:トンネル状の窯で焼かれる土器

【瀬戸焼】(せと)愛知県瀬戸市

  • 古墳時代から存在する猿投窯がルーツ。
  • 施釉陶器で江戸時代には陶磁器技法を取り入れた。
  • 色鮮やかな瀬戸青磁や瀬戸黒が特徴。
  • 日本屈指の窯処で、陶磁器を「瀬戸物」と呼ぶ所以。

【常滑焼】(とこなめ)愛知県常滑市

  • 大型製品が多く、低価格・大量生産を実現。
  • 素朴で野趣に富んだ自然釉。灰釉や赤絵などの多彩な技法が特徴。

【信楽焼】(しがらき)滋賀県甲賀市

  • 奈良時代始まりで、陶土の特性を生かした石爆ぜなどが特徴。
  • 茶陶信楽として知られ、有名な信楽たぬきや火鉢もある。
  • 赤土を用いた赤信楽や白化粧を施した白信楽などが特徴。

【丹波焼】(たんば)兵庫県丹波篠山市

  • 平安時代末期から鎌倉時代初期に起源。
  • 装飾法が多様化し、丹波七化けなどの技法が発展。
  • 独特の黒色や灰色の釉薬が特徴。日本最古の窯跡があり、約1300年の歴史がある。

【備前焼】(びぜん)岡山県備前市

  • 須恵器の生産地として栄え、邑久地方で備前焼が生まれた。
  • 焼き締めで赤みの強い肌合いと窯変の美しさが特徴。
  • 茶陶の名品が作られ、釉薬を使わずに素焼きされる。

陶器、磁器の制作工程~器ができるまで~

次は、一般的な制作工程を確認しておきます。
安く販売されている陶磁器は、当然ながら機械化された大量生産品。
職人の作る陶磁器は、納得の作品になるまでに長い歳月が掛かります。

STEP
土を作る(数日~3年程度)

不純物を除き、時には土を寝かせてから、水を加え、練る。
寝かせるのは「粘りが出て成型しやすくなる」からで、これは土の中のバクテリアが分解を促進して、粘度が高まるため。

STEP
成形(数時間~数日)

ろくろ、手捻り、紐、型を用いて成形する。

STEP
乾燥(2週間程度)

通気性、柔軟性をもたせるために天日乾燥させる。
取っ手、櫛目、鎬(しのぎ)といった装飾はこの段階で乾く前に行う。

STEP
焼成(素焼き)(数時間~(冷めるまで)3日程度)

800℃程度で数時間焼き、水分を除去して強度を上げる。

STEP
下絵付(数日程度)

染付、鉄絵などの器では、表面に顔料などで絵付けする。
下絵付をしない器もある。

STEP
釉薬をかける(数日)

鉱物(珪砂など)に融和剤(鉛、灰、ソーダ、錫)を混ぜた液体。
釉薬で強度が増す。彩色、装飾といったことから吸水性を無くし使い勝手を良くする効果まである。

STEP
焼成(本焼き)(半日程度~(冷めるまで)3日程度)

1100~1400℃程度/素地の成分をガラス化させる。
釉薬もガラス化し艶と輝きがプラスされる。
炎の強さ、時間、雰囲気などの本焼き工程が、土や釉薬の出来映えを左右する。

STEP
上絵付(数時間)

エナメル顔料などで華やかに装飾を施す。
例: 赤絵、錦手、五彩など。

STEP
上絵焼成(半日程度~(冷めるまで)3日程度)

800℃程度/上絵の発色させる。

STEP
窯出し

ゆっくりと冷まし完成。

器の種類によっては、省略する工程もありますが、短くても数週間の期間を要します。特に原土を寝かせる工程は気が遠くなります。
本物の焼き物には、価値があり、まったく同じものがないことも理解できるでしょう。

磁器と陶器の特徴と違い

土もの、石ものとも言われるのは、原料の違いからです。
普段、ぼくらが食事で使用する器の多くは磁器であり、イメージしやすいと思います。
100均で売られているお茶碗やお皿を想像したのなら、それは機械的に大量生産された磁器です。

ここでは、磁器と陶器の特徴を表にして、わかりやすくまとめました。

スクロールできます
項目磁器陶器備考
原料陶石
(白く硬い石を細かく砕いたもの)
陶土
(茶色っぽい粘土)
磁器は扱いやすく、
流通する食器の9割以上を占める
焼成温度1300〜1400℃1100〜1200℃素地は高温ほど緻密に、丈夫になる
手触りツルツルで
薄く硬い印象
ザラザラで
厚く柔らかい印象
吸水性ほぼ無しやや高い吸水性が高いほど、
液体や油の汚れやシミ、においが
器に移りやすい
弾いたときの音澄んだ高い音鈍く低い音
光を当てたとき光を通す光を通さない
釉薬ありあり焼成によってガラス質になり、
ツヤが出て、水の浸透を防止する
熱伝導率高い低い磁器は「熱しやすく、冷めやすい」
陶器は「熱しにくく、冷めにくい」
代表例伊万里焼
九谷焼
砥部焼
信楽焼
伊賀焼
備前焼

これだけは覚えておきたい【著名陶芸作家】

【北大路魯山人】1883年~1959年
きたおおじろさんじん
日本の多才な芸術家。篆刻家、画家、陶芸家、書道家、漆芸家、料理家・美食家などの分野で活躍した。彼は幼少期に苦境を経験しながらも美への情熱を持ち、絵画や書道の才能を開花させた。日本画壇での地位を確立し、晩年まで創作活動を続けた。

【古田織部】1544年~1615年
ふるたおりべ
安土桃山時代および江戸初期の武将かつ、茶人。織部陶器の発案者、陶工に作らせた人物。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕え、茶道の普及に貢献した。作品は歪んだ形の茶碗や特徴的な茶室などで知られ、大きな影響を与えた。大坂夏の陣の際、罪に問われ自刃したが、茶道の形式を後世に伝えた。

【酒井田柿右衛門】1596年~1666年
さかいだかきえもん
江戸時代の陶芸家で、代々その子孫が襲名している。
初代から四代までの柿右衛門は乳白色の地肌に赤色の上絵を焼き付ける作風を確立し、ヨーロッパにも輸出された。五代から七代までは染付の磁器を製作したが、七代以降は濁手の作品は中絶した。柿右衛門様式は大和絵的な花鳥図を暖色系で描き、非対称で乳白色の余白が特徴的である。

【河井寛次郎】1890年~1966 年
かわいかんじろう
日本の陶芸家であり、彫刻、デザイン、書、詩、詞、随筆の分野でも作品を残してる。華やかな作風から民藝運動に影響を受け、実用的な陶器制作に取り組みました。作品は簡素で奔放な造形を特徴とし、彼の自宅兼仕事場は現在の河井寬次郎記念館となっています。
彼は文化勲章や人間国宝を辞退し、晩年まで創作活動を続けました。

【濱田庄司】1894年~1978年
はまだしょうじ
日本の陶芸家。益子焼の中興の祖となった。
作品はシンプルな造形と大胆な釉薬の模様が特徴的。
重要無形文化財保持者(人間国宝)であり、民藝運動にも貢献した。

【野々村仁清】生没年不詳(17世紀)
ののむらにんせい
江戸時代前期の陶工で、京焼色絵陶器を完成させた。彼は自身の作品に「仁清」という印をつけ、轆轤(ろくろ)の技術に優れていた。代表作には色絵雉香炉や色絵藤花図茶壺があり、これらは国宝や重要文化財として知られている。

【陶磁器の歴史】まとめ

陶磁器の歴史は、古代から現代までの数千年にわたり、様々な文明や技術の発展とともに進化してきました。陶磁器は、その美しさと実用性から、多くの人々に愛されてきました。

日本では、特に茶道などの文化とともに発展しました。 ヨーロッパでは、陶磁器製造の技術革新が行われ、工業化と芸術性の両立が図られました。 また、陶磁器を生み出した名工たちの功績や作風も魅力的です。

特に、美食家でも有名な北大路魯山人は板前でも知っている人は多いことだと思います。紹介した陶芸家たちを始め、名工は日本の陶磁器の歴史において重要な役割を果たしました。

板前として器に興味を持ったなら、湯呑みや茶碗などお気に入りを見つけて、1つだけ買ってみるのもアリです。それは自分の気付かない興味の扉を開くことになるかもしれません。行動を起こすことで、きっと心の中の何かが変わります。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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