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パプリカ先輩
・板前一筋23年
・ふぐ免許保有
・料亭、ミシュラン店、会員制クラブ勤務
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【板前が教える】失敗しない自家製からすみの作り方|乾燥時間を短くするために

3年目 あい

パプリカ先輩!そろそろ“からすみ”の仕込みを覚えたいんですけど、あれって難しいんですよね?

パプリカ先輩

高い技術が必要なわけじゃない。
からすみは、丁寧な下処理と感覚で判断する部分が仕上がりを左右するんだ。
特に気をつけたいのが干しの工程だな。
屋外にはリスクがあるから、水分をしっかり抜いて、干す時間をできるだけ短くする。
そこに板前の工夫と経験が出るんだよ。

3年目 あい

なるほど!!私も自分の手で作れるようになりたいです。

パプリカ先輩

よし。今日から仕込みの流れを全部教えよう!
からすみは、どれだけ素材と向き合えるかの勝負だ。

自家製のからすみは、店の格を一段引き上げる特別な一品です。
濃厚な旨味、ねっとりとした舌触り、そして黄金色の輝き——。

一見すると難しそうな伝統的珍味ですが、実は工程そのものは驚くほどシンプル。
必要なのは、丁寧な下処理と、乾燥のタイミングを見極める“料理人の目”だけです。

パプリカ先輩流「からすみの作り方」
  • 全体に針打ち(自家製針)
  • 水にさらして重しで血抜き&水抜き
  • 塩漬け3時間
  • 焼酎漬け30分
  • 屋外&屋内干し

この記事を書くのはプロの板前!

  • 板前一筋22年、料理長経験
  • 東京都ふぐ免許保有
  • 都心の料亭やミシュラン獲得店、会員制クラブなどに勤務

 【詳しいプロフィールはこちら】

本記事では、板前が仕込みの現場で実際に行っている からすみの作り方 を工程ごとに解説します。
初めて挑戦する方でも失敗しないためのコツから、美しく仕上げるポイントまで、
読みながらそのまま実践できる内容にまとめました。

あなたの店だけの“極上のからすみ”を仕込んでみませんか。

目次(INDEX)

からすみとは?【日本三大珍味】

からすみは、ボラの卵巣を塩漬けし、天日干しして作る日本の高級珍味で、「うに」「このわた」と並ぶ日本三大珍味の一つとして知られています。

濃厚な旨味とねっとりとした食感が特徴で、日本酒との相性は抜群。料理の仕上げにすりおろせば、ひと振りで風味が一段格上げされます。

ちょっと話したくなる“からすみのウンチク”

  • 語源は「唐墨(からすみ)」
     形が中国の墨(すみ)に似ていたことから「唐の墨=からすみ」と呼ばれるようになったのが由来。実は漢字の「鱲子(ラスヅ)」とも関係があるという説もあります。
  • 世界の三大からすみの一つ
     日本のからすみは、イタリアの「ボッタルガ」、台湾の「烏魚子(ウー・ユーツー)」と並び“世界三大カラスミ”の一角。味わいは国ごとに異なり、日本のものは特に上品で柔らかい仕上がりが特徴です。
  • 主産地は長崎が有名
     江戸時代から続く名産地で、特に「長崎からすみ」は格式の高さで知られています。他にも岡山・瀬戸内・熊本など、冬場に良質なボラが獲れる地域で生産されています。

からすみはシンプルな素材ながら、歴史や文化が深く、その語源だけでも話のネタになる面白い食材です。料理に使えば香りと旨味が広がり、和食の奥深さを改めて感じさせてくれる逸品です。

からすみの作り方【写真多数】自家製からすみを仕込む全工程

ここからは実際の写真を元に解説します。

からすみの作り方はおおまかに以下の4ステップです。

  1. 血抜き
  2. 塩漬け
  3. 酒漬け
  4. 乾燥

この基本の手順でも、それぞれの工程は店や人によって異なります。細かなやり方は無数にあり、自分で試してみるのも楽しいです。

血抜き|板前が最も時間をかける理由

まずは、「血抜き」の工程です。

血抜きのポイント
  • 血抜きの目的は「見た目を良くするため
  • 丁寧に根気よく針打ちする
  • 血は抜いても手は抜かない

「血抜き」は、最も手間がかかり、面倒な作業です。しかし、仕上がりを左右するとても大切な工程であるため手抜きは厳禁。

ボラ子の目利きとして、内出血がないもの、卵巣の薄皮の破れていないものを選びます。

家庭用として仕込む場合には、内出血があるもので構いません。見た目は落ちますが、おいしさは変わらず、安価に購入できるでしょう。

裏側には太い血の筋があります。

卵巣が繋がっている「ヘソ側」から先端に向かってスプーンで血を掻き出します。

スプーンでは、大きな血の塊しか除けません。

おいらの場合は、針打ち用の自家製針。

割り箸の先端に裁縫用の針を固定して作成しています。使用前には、熱湯とアルコールで消毒します。

裏表全体に満遍なく針打ちします。

針打ちにより薄皮に穴を開けて、血の抜ける道を作ります。

この針打ちにより、乾燥時に斑点模様が現れます。気になる方は、裏側のみに針打ちをすると良いです。

しかし、お客様に提供する際には、薄皮は剥き、スライスするのが基本なのであまり神経質にならなくても問題ありません。

それよりも、早くキレイに血が抜くことを優先しています。

水にさらして血抜きします。

1時間ほど水にさらして、ザルに上げます。

卵巣内に水が入り膨張しています。

薄皮を破らないように丁寧に扱いましょう。

お盆などの平らな場所に、清潔なクッキングペーパーを広げます。

ボラ子を並べて上からもクッキングペーパーを被せます。

さらにお盆で挟み、上から重しをします。

サンドしたまま1時間ほど置きます。血が水と共に薄皮から押し出されます。

この「水にさらす」「重しをのせて水を出す」という作業を3回程度繰り返します。

重しをのせる工程の最後の1回は、冷蔵庫内で一晩越します。

パプリカ先輩

おいらは、
屋外で干す時間をできる限り短くしたいと思っている。
そのために、重しをして干す前に水分を抜き、干す時間を短くするんだよ。

この重しをする工程で、「塩漬けする時間と乾燥する時間を短縮させること」ができます。

毛細血管の中の血までキレイに抜け、赤い血管が見えないのが良い状態です。

個体によっては血の抜けきらないもの、血栓の様に血が詰まっているもの、様々です。

だいたいの個体はキレイに血が抜けているハズです。

パプリカ先輩

「血抜きの工程」はここまで。
大切なのは「血を残さないこと」。
手を抜くと仕上がり、断面に血が見え見た目が悪くなるよ!

塩漬け|味と保存性を決める重要工程

次の工程は「塩漬け」です。

塩漬けのポイント
  • 塩漬けの目的は「脱水と調味
  • 塩はケチらない
  • 塩加減で味が決まる

塩漬けの加減により、水分の抜け具合と塩辛さが決まります。この段階では、味見ができないため塩辛さの加減は時間を計りましょう。

ボウルに塩をたっぷり用意して、ボラ子を一腹ずつ移します。全体的に塩をまぶしていきます。

裂け目やヘソの付近は、塩がくっつきにくいので丁寧にまぶしましょう。

浸透圧の作用により水分が出て、卵巣内に塩が浸透します。穴あきバットなどで卵巣から出た水分が卵巣に触れない様にします。

卵巣内の水分は、臭みがあり品質を劣化させます

MEMO:浸透圧

水は「塩が少ないほう → 多いほう」へ動く性質があるそのため、食材の中の水が外に引っぱり出される作用のこと

表面が乾いて、上手く塩がのらないときは塩を追加して下さい。塩を使いすぎてもったいない気がするのも理解できますが、ケチると失敗しやすくなります。

この塩漬けの工程は【3時間】です。誰が何度も繰り返しても失敗することはない。それが3時間です。

パプリカ先輩

とはいえ、時間はあくまで目安だよ。
ボラ子には個体差があるし、大きさや時期によって水分の抜け方は全然違う。
だからおいらは、時間だけに頼らず、水分の抜け具合を見ながら調整しているんだ。
硬さも同じで、最後は指で優しく触って確かめるしかない。
そこはマニュアルじゃなく、経験で判断するところだな。

重しの工程をしないと、卵巣内から大量に水分が出てきます。その場合、3時間では脱水が足りないため一晩〜数日間塩漬けしたままにします。

浸透圧の作用により、卵巣内の水分が外側へと出されます。結果とし卵巣は締まり硬さが増します。

※「硬くなる」とは脱水前と比較して、ということです。乾燥前のボラ子はいずれも柔らかく、簡単に薄皮が破けるので、取り扱いには細心の注意を払いましょう。

3時間後、表面の塩はしっかりと洗い流します。

薄皮を破らないように、優しく。

パプリカ先輩

おいらは避けているけど。
数日間、塩漬けをする場合はここで塩抜きの工程があるよ。
からすみは塩辛い珍味で、塩分濃度が高い方が日持ちするけど、しょっぱすぎても美味しくないよ。

【主な塩抜き方法】
①流水にさらす
②氷水の中に漬ける
③呼び塩する

なぜ、塩抜きしない方が良い?

水に触れる時間が長くなると、再び卵巣内に水分が戻るから。

なぜ、卵巣内に水分が戻らない方が良い?

屋外での乾燥させる時間が長くなるから。

なぜ、陰干しは短い時間の方が良い?

鳥害や天候、衛生面での懸念があるから。

酒漬け|香りと個性を加える工程

さらに、「酒漬け」の工程です。

酒漬けのポイント
  • 酒漬けの目的は「香り付け
  • 殺菌効果は微妙
  • 酒漬けでも塩気が抜ける

酒漬けの酒類は、焼酎が一般的です。おいらの場合は、大衆銘柄の「麦焼酎いいちこ」を用いています。

アルコールには殺菌効果がありますが、焼酎などの蒸留酒の40%くらいのアルコール度数では殺菌効果は科学的に認められていません。

厚生労働省の公表する「消毒・除菌方法」によれば、効果的な殺菌アルコール度数は70%程度とのことです。

ボウルにボラ子を入れて、焼酎を注ぎます。途中で上下を入れ替えムラができないようにします。

表面にラップを密着させます。漬け時間は30分。

この酒漬け時間も人により、店により異なります。数日間漬けっぱなしのパターンもあるほどです。

パプリカ先輩

「酒漬け」は個性を出せるポイント!
焼酎が王道だけど、日本酒やウイスキー、ブランデー、ウォッカなどでも良い。
おいらも色々試してきたけど、結局、焼酎が好みに合ってたんだよ。

乾燥|食感と保存性を決める最終工程

最後に、「乾燥」の工程です。

乾燥のポイント
  • 乾燥の目的は「保存性向上と旨味の凝縮
  • 乾燥具合で食感が変化
  • 成形しながら干すとより良い
  • 屋外にはリスクがある

乾物や干物は、水分を少なくして腐敗を防ぎ、アミノ酸が生成されて美味しくなります。

乾燥が進むほど、水分が抜けて硬くなります。食感の変化を楽しめるし、使い方にも多様性があります。

【屋外に干す】ことは、衛生面や天候などにより想像以上に制限があります。

屋外に干すリスク
  • 鳥や虫に食われる
  • 雨や雪などの天候
  • 直射日光で傷む
  • 湿度が高いと腐敗する
  • 砂ぼこりや汚れが付く

リスク回避できる環境でなければ、できる限り屋外陰干しは短い期間が良いでしょう。

焼酎から上げて、軽く拭き取り、虫除けの「干しカゴ」に並べます。カゴの網目が付かないようにクッキングシートを下に敷きます。

屋根付き屋外で干します。万が一、雨に降られたら台無しなので注意が必要です。

ぷっくりと弾力のあるかわいらしい見た目の1日目。

表面は焼酎を湿らせたクッキングペーパーを塗る、あるいは焼酎の霧を吹く。

焼酎を塗るのは、内外の乾燥加減を少なくすることと、香りを付けるため。

陰干しは天気が良く、気温が低く、適度な風がある日が最適です。

より丁寧な干し方は以下を繰り返します。

①昼間は陰干し

②夜は成形して冷蔵庫

成形とは、平らなガラス板やお盆などでボラ子を挟み適度な重しをして冷蔵庫で一晩過ごします。

おいらの店は都内のビルの中。

屋上に干すには、「管理人さんに付き添ってもらい、屋上の鍵を空けてもらう必要がある」ため、頻繁に面倒が見れません。

まあ、言い訳なんですがね。

だいぶ表面が硬くなってきました。

成形してないから、形はイビツ。

屋外陰干しはここまで。

天気も悪いこともあり、室内に移動。扇風機の風を24時間当てます。

途中経過の断面。

この状態で試食。

うまいっ!!!

表面の点々はカビではなく、針打ちした針の穴。

薄皮を剥がせば目立たなくなります。

後半は室内扇風機干しで1週間ほど。

押すとわすがに弾力があり、カチカチに干さない。

パプリカ先輩

乾燥加減も好みや個性を表現できるポイントだ。
どのくらいの厚さに切るか、
そのままか、炙って食すか、
あるいは、おろし金で削り振りかけるのか……
用途や食感をイメージして干すと良いよ。

からすみの保管方法|風味を落とさず長持ちさせるコツ

今年は2回仕込みました。これで1年中使うことができます。

塩分も控え目、乾燥加減も控え目であるため、すぐに使う予定のない分は真空パックして冷凍します。

真空パックできない場合は、ラップでピッチリと包み空気に触れない様にしてください。

からすみ本来の味と香りを持続させるために、空気を遮断して、できる限り低い温度帯で保存してください。

冷凍することで1年経っても、しっかりうまい!!

からすみの切り方|薄皮を剥がして用途に合わせる

実際にからすみを食べる際には、薄皮を剥がして、包丁します。

カチカチに乾燥している場合、薄膜はうまく剥がせません。

その場合は、酒を染み込ませたクッキングペーパーで包み、さらにラップで包みます。

10分ほど置くと、表面がしっとりして薄膜は剥がしやすくなります。

ここでは、薄く切り出して「からすみ大根」、大根と挟んで食べます。

まとめ【自家製からすみの全て】

3年目 あい

工程は理解できたんですけど……正直、失敗しそうでなかなか踏み出せなくて。

パプリカ先輩

確かに、最初から理想通りの仕上がりは難しいかもしれないね。
でも、おいらのやり方なら大きく失敗することはないし、何度も経験しないと分からない感覚も確かにあるんだよ

3年目 あい

例え失敗しても、やったほうがいいですか?

パプリカ先輩

当たり前だ!
きちんとフォローするからやってみるといいさ。からすみは“作った数だけ、感覚が残る”。
怖がらずに仕込め。失敗も、ちゃんと次の一腹に活きるから。

からすみ作りは、特別な技術よりも一つひとつの工程を丁寧に積み重ねることが何より大切です。
血抜きで雑をしない、塩をケチらない、酒漬けと乾燥で自分の“味”を探す――その積み重ねが、断面の美しさや旨味の深さとなって現れます。

手間も時間もかかりますが、自家製のからすみは店の個性を語れる一品になります。
削って良し、炙って良し、切り方ひとつで表情も変わる。仕込んだ分だけ、料理の幅も確実に広がります。

最初は思い通りにいかなくて当たり前。
それでも仕込みと向き合った経験は、必ず板前としての引き出しになります。

ぜひ一度、自分の手で“あなたの店のからすみ”を仕込んでみてください。
その一腹が、料理人としての自信につながるはずです。

この記事を書いた人

パプリカ先輩

板前一筋23年

東京都ふぐ免許保有

料亭、ミシュラン店、会員制クラブ勤務

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