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【日本料理とガラスの器】ガラスの種類・歴史を解説|映える透明感の魅力

新人の板前

ガラスなんてどれも一緒じゃないんすか?

先輩の板前

新人君、甘いな!ガラスの器も奥が深く、それぞれ特徴があるんだ。

板前が料理を器に盛るのは、漆器や磁器だけではなく、ガラスも使用します。透明感と美しさを持つガラスの器は、日本料理とも相性が良く、特に冷たい料理には適しています。
コースの中の一品にガラスの器を取り入れると、コース全体のリズムに新鮮さや、抑揚が生まれます。

ガラスの器は……?

  • 種類は製法や成分によって異なる
  • 古代から現代まで様々な文化や技術の影響を受けてきた
  • カッティングや装飾によってより美しくなる

この記事では、代表的なガラスの器であるビードロ、ギヤマン、クリスタル、切子について解説します。

目次(INDEX)

ガラスの製法と装飾:砂を焼いて冷やし固める

そもそもガラスは何からできているのか、知っていますか?
ゲーム「マインクラフト」では、砂浜の砂を焼くことでガラスができるんです。
つまり、ガラスの主成分は「砂」です。

ガラスの主成分と透明な輝き

ガラスについてもう少し、詳しい説明は以下の通りです。

成分主な源役割・特性
ケイ素酸塩砂、石英など主成分。
ケイ素と酸素からなり、
基本的な構造を形成
アルカリ金属ナトリウム、
カリウムなど
融点を下げ、
加工性を向上させる
アルカリ土類金属カルシウム、
マグネシウムなど
強度や耐久性に寄与
酸化物アルミニウム、
ホウ素など
硬さや透明性に影響

加工と彫刻技術の魅力

ガラスの加工や装飾は、高度な技術が必要で世界各地で発展してきました。

  • 溶けた状態で吹いたり、型に流したりして形を作る
  • 冷えた後に切ったり、磨いたり、彫ったりして絵柄、模様つける
  • 色を重ねたり、金属や石などをで装飾する

料理屋でのガラス器の使い方|皿・鉢・ぐい吞み

日本料理の世界でガラスの器は、涼しげな印象を与えてくれます。
特に、夏場に重宝され冷たい料理を引き立てます。
使う機会の多い器は「皿、鉢、ぐい呑み」でしょう。

【皿】
五寸(約15cm)くらいのお皿であれば特に刺身、サラダを盛る機会が多いでしょう。
【鉢】
小鉢ならコースの最初の先付けや、酢の物で食欲をそそります。
【ぐい呑み】
料理に合わせた日本酒はもちろん。食前酒やすり流し、珍味入れと使えます。

【ギヤマン vs ビードロ】日本のガラス製品

ギヤマンとビードロは日本のガラス工芸です。
一般的な違いは以下の通りです。

項目ギヤマンビードロ

ポルトガル語でダイヤモンドを意味する
「diamante(ジアマント)」
ポルトガル語でガラスを意味する
「vidro(ヴィドロ)」

ガラスにカットを施したもの。
輝きや透明感が高く、
重量感がある
クリスタルガラスを原料にした吹きガラス。
透明度が高く、硬い¹²

ガラスを溶かして成形した後、
ダイヤモンドや金剛砂などで
カットする
ガラスを溶かして
水飴状になったものを棹に巻き取り、
息を吹き込んで、
成形する


江戸切子、薩摩切子、
ヴェネチアングラス、
ボヘミアングラス など
風鈴、かんざし、
金魚鉢、
肥前びーどろ、
津軽びいどろ など

【クリスタルガラスの魅力】水晶の輝きと希少性

クリスタルガラスとは透明で水晶のように輝く高品質なガラスです。
高い透明感と美しいカットは料理を引き立てててくれます。

ガラスの成分
による分類
特徴
ソーダ
ガラス
安価で汎用性が高い
硬くて軽い
たたくと低く鈍い音
クリスタル
ガラス
高級食器に利用
硬度が低く成形しやすい
透明度と屈折率が高い
たたくと高い澄んだ音
ホウケイ酸
ガラス
耐熱ガラスとして利用
温度差に強い
強度がある

クリスタルガラスの特徴|メリットとデメリット

【メリット】

  • 高い透明度
  • 高い屈折率
  • 高級感
  • 澄んだ音色
  • 柔らかく加工しやすい

【デメリット】

  • 高価
  • 重い
  • 傷つきやすい
  • 強度が低い
  • 急激な温度変化に弱い

屈折率は高いほど、より光を反射して輝いて見えます。

物質屈折率
空気1
1.3
ガラス1.5
ダイヤモンド2.4

クリスタルガラスは酸化鉛という成分の含有量によって分類されます。酸化鉛が多いほど、透明度や屈折率が高く、キラキラと輝いて見えますが、鉛の毒性の問題があると言われています。

酸化鉛の含有量の多いクリスタルガラスは「アルコール、炭酸、酢など」に長時間漬けておくと鉛が溶け出すことがあり、人体に悪影響を及ぼします。
現在は、無鉛クリスタルガラスや高品位の無色透明ガラスに置き換えられつつあり、鉛の代わりにバリウムやカリウムなどを用いて、軽く硬いクリスタルガラスへと進化しています。

クリスタルガラス
詳細分類
酸化鉛含有率
密度
フルレッド
クリスタルガラス
30%以上
3.00g/cm3
レッド
クリスタルガラス
24%以上
2.90g/cm3
セミレッド
クリスタルガラス
10%以上

【バカラ・スワロフスキー】海外ブランド

クリスタルガラスの用途は食器、グラス、花瓶、オブジェ、シャンデリア、ジュエリーなどです。いわゆる高級な工芸品や装飾品に使われています。中でも、有名な海外ブランド2社を紹介します。

【バカラ】
・フランスのクリスタルガラスのブランド
・1764年に創業
・繊細なデザインが特徴
・高い技術とデザイン
・世界中の王室や富裕層に愛されている

【スワロフスキー】
・オーストリアのブランド
・1895年に創業
・小さくてカラフルなデザインが人気

【切子とは?】日本のガラス工芸の伝統と進化

  1. 切子とは?
    カッティングガラスとも言う
    ガラスの装飾加工法の名称(または製品自体)を指す
    ガラスの表面に金属製の回転砥石を研磨剤とともに押しつけて、溝を入れたり研磨したりして独特のデザインを施す工芸技術
  2. 江戸時代の切子
    起源はヨーロッパのカットガラス
    装飾は無色透明のクリスタルガラス
    技術は海外から導入され確立
  3. 現在の切子
    ガラスは「無色透明な内側」と「色付きの外側」の二重構造である
    ・内側の無色透明は「透きガラス(すきガラス)」でクリスタルガラス、またはソーダガラス
    ・外側の色付きは「色被せ(いろきせ)ガラス」でソーダガラス

【江戸切子】国が認めた伝統工芸品

【江戸切子とは?】
江戸時代後期から現在にかけて、東京都で生産される切子加工が施されたガラス製品の総称です。
1985年 東京都指定伝統工芸品
2002年 経済産業大臣指定伝統的工芸品

【江戸切子の条件】

  1. ガラスである
  2. 手作業による製作
  3. 主に回転道具を使用
  4. 指定された地域(江東区を中心とした関東一円)で生産されている

【江戸切子の特徴】

繊細で細密な彫刻
透明ガラスと色ガラスの二重構造
代表的なデザインには「魚子紋」
日本らしい幾何学模様の採用

【江戸切子の歴史】
江戸時代後期 大伝馬町でビードロ問屋の加賀谷久兵衛が最初
明治時代 硝子製造所の建設やイギリスのカットグラス技師の教えで、技術が向上
大正~昭和初期 「和グラス」として人気を博し、多くの江戸切子のメーカーが創業

【江戸切子の製作工程

  1. 割り出し・墨付け
    図案の目印を入れ
    基準となる線を砥石で浅く削る
    わずかな目印を作成
  2. 荒摺り・三番掛け
    仕上がりの4分の3程度の幅や深さまで削る
    高速で回転する円盤と砂を使用して削り出す
  3. 石掛け
    模様を整え、研磨して表面を滑らかにする
  4. 磨き
    表面を透明で光沢のある状態に戻す
    円盤や砥石、水と磨き粉で磨く
    最後に布の円盤で仕上げ磨きを施す

江戸切子の文様

ガラスの表面に刻まれる紋様には、様々な種類や意味があります。代表的なものをいくつか紹介しましょう。

文様文様名説明
魚子文
ななこもん
魚の卵のように連なった細かな文様
菊つなぎ文
きくつなぎもん
菊の花が連なっているような文様
八角籠目文
はっかくかごめもん
45度に交差させて作られた籠の文様
菊花文
きっかもん
菊の花を大きく表現した文様
麻の葉文
あさのはもん
麻の葉を上から見た姿を表した文様
笹の葉文
ささのはもん
笹の葉の形を表した文様
矢来文
やらいもん
竹を交差させて作る「矢来」と呼ばれる囲いをイメージした模様

【ガラス器のまとめ】一流板前へのステップ

この記事では、日本料理とガラスの器の関係について紹介しました。

ガラスの器は、種類や歴史、製法、装飾が異なり様々な特徴や魅力を持ちます。

特に、和食器としても活用されるビードロ、ギヤマン、クリスタル、切子について解説しました。

ガラスの器は、砂を焼いて冷やし固めるというシンプルな原理で作られますが、様々な技術や装飾で多彩な表現が可能です。

透明感や輝き、色や形などで様々な表情を見せ、自身も芸術品としての価値を持っています。

つまり、器は使い方次第で、料理の美しさや味わいを引き出し、お客様へのおもてなしの一つとなります。

器の知識を深めることで、独創的なアイデア、新たな料理の楽しみ方を生み出し、一目置かれる板前へと成長できます。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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