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【料理人必見】プロ意識を持て!食中毒を未然に防ぐために|HACCPの基礎

新人の板前①

トイレ後だけど、めんどくさいから手洗いしなくていいっかー……

新人の板前②

冬場の水は冷たいから、手洗いやめよーっと!

食中毒は飲食店にとって最も深刻なリスクの一つです。
食品衛生上の基本中の基本である、手洗い。調理場内でも正しくできない人がいます。

その軽はずみな行動が人の命を奪い、店の存続をも危うくする恐れがあります。

食中毒を未然に防ぐことは、プロの料理人にとって絶対不可欠で、正しい知識と高い意識が求められます。

この記事を書くのはプロの板前!

  • 板前一筋22年、料理長経験
  • 東京都ふぐ免許保有
  • 都心の料亭やミシュラン獲得店、会員制クラブなどに勤務

 【詳しいプロフィールはこちら】

この記事では、なぜ食中毒予防が重要かを掘り下げ、食中毒の実例や統計を元に「食中毒の恐ろしさ」を紹介します。
さらに、食中毒菌の特徴や予防方法から、HACCP(ハサップ)という世界標準の食品衛生対策についての基礎を解説します。

自分の作った料理を食べたお客様が喜んでくれるのは、板前として最も嬉しい瞬間です。しかし、その料理が菌に侵されていたら……

大根をかつら剥きできるより、魚をキレイに卸せるより、しっかりと手洗いする高い意識。年齢や経験年数ではなく、自分は「プロフェッショナルである」という自覚が、一流の板前へと導いてくれるでしょう。

目次(INDEX)

なぜ食中毒を防ぐことが重要なのか?

食中毒は、飲食店にとって最も恐れることの一つと言えます。

なぜなら、

  • 人の命奪う
  • 店は存続できない

そのような危険性があるからです。

そもそも食中毒とは、食品中の有害物質によって引き起こされる感染症や中毒症の総称です。

食中毒には、さまざまな原因と症状がありますが、共通しているのは、「食品の安全性や品質に問題があった」ということです。

食べたお客様にも、提供した店側にも、何一つ良いことがありません。

命にかかわる深刻な事故

まず、食中毒で重症化すると最悪の場合、死に至ることがあります。
特に、高齢者や乳幼児、妊婦などの免疫力の低い人は、より高いリスクが伴います。

厚生労働省の統計(食中毒統計資料では、1981年~2022年の42年間で、食中毒による死亡者のいない年はたったの2年間のみです。
(飲食店以外の施設や家庭での事故も含みます。例:釣ったフグを食べてしまった)

食中毒は人の命にかかわる深刻な問題なのです。

店の信用と責任を失わせる

次に、飲食店での食中毒の発生は、店の信用を失わせ、行政処分や訴訟などの法的な責任を問われることになります。

客足は遠のき、店の経営や評判に大きなダメージを与えることになるのです。失業や閉店、廃業などのリスクも潜んでいます。

プロ意識を持て!調理師の役割と使命

つまり、日々、おいしい料理の提供を目指すために行う業務は、「食中毒を未然に防ぐ」という大前提の基にされなければいけません。

「知らなかった」「忙しくて」では済まされるハズもなく、料理に携わる人間は正しい知識と確実な実践を通じて、後輩たちを教育しなくてはいけません。

日本料理の板前にとっても例外はなく、料理のプロとして、安全な食事の提供食中毒のリスクを常に意識することが必要です。

【実例】過去に起きた食中毒事件

2021年~2023年の3年間で発生した「食中毒死亡事故」一覧です。

発生場所原因食品病因物質原因施設死者数
北海道ドクツルタケ植物性自然毒家庭1
栃木県不明その他のウイルス老人ホーム1
和歌山県不明サルモネラ属菌仕出屋1
福岡県鶏トマト煮病原大腸菌飲食店1
北海道イヌサフラン植物性自然毒不明1
青森県ふぐ(従業員)動物性自然毒飲食店1
秋田県イヌサフラン植物性自然毒家庭1
京都府ローストビーフ腸管出血性大腸菌販売店1
宮崎県グロリオサ植物性自然毒家庭1
北海道イヌサフラン植物性自然毒家庭1
沖縄県春雨の和え物サルモネラ属菌老人ホーム1
食中毒統計資料を元に作成
スクロールできます
発生場所原因食品病因物質原因施設
者数
北海道ドクツルタケ植物性自然毒家庭1
栃木県不明その他ウイルス老人ホーム1
和歌山県不明サルモネラ属菌仕出屋1
福岡県鶏トマト煮病原大腸菌飲食店1
北海道イヌサフラン植物性自然毒不明1
青森県ふぐ(従業員)動物性自然毒飲食店1
秋田県イヌサフラン植物性自然毒家庭1
京都府ローストビーフ腸管出血性大腸菌販売店1
宮崎県グロリオサ植物性自然毒家庭1
北海道イヌサフラン植物性自然毒家庭1
沖縄県春雨の和え物サルモネラ属菌老人ホーム1
食中毒統計資料を元に作成

2021年~2023年の3年間で発生した「各年、飲食店での患者数の多い事故」一覧です。

2023年原因食品病因物質患者数
大分県不明ノロウイルス309
愛知県はんぺん,ごはん
いんげん煮付け
ウエルシュ菌267
神奈川県給食弁当ウエルシュ菌265
2023年原因
食品
病因
物質
患者数
大分県不明ノロウイルス309
愛知県はんぺん
ごはん
いんげん
ウエルシュ菌267
神奈川県給食弁当ウエルシュ菌265
2022年原因食品病因物質患者数
徳島県不明ノロウイルス165
長野県鶏と野菜炒めウエルシュ菌150
青森県不明ウエルシュ菌130
2022年原因
食品
病因
物質
患者数
徳島県不明ノロウイルス165
長野県鶏肉と
野菜炒め
ウエルシュ菌150
青森県不明ウエルシュ菌130
2021年原因食品病因物質患者数
埼玉県海藻サラダその他の病原大腸菌2958
大阪府ラーメンその他の病原大腸菌378
兵庫県給食弁当その他の病原大腸菌263
2021年原因
食品
病因
物質
患者数
埼玉県海藻サラダ病原
大腸菌
2958
大阪府ラーメン病原
大腸菌
378
兵庫県給食弁当病原
大腸菌
263

【最新版】食中毒の現状と傾向

厚生労働省が公表する統計から、過去に起きた食中毒事故の概要は以下の通りです。
(直近の8年間、2015年〜2022年の統計)

食中毒の統計|施設別・食品別・原因菌別

【食中毒の全体数】

食中毒は、国内で年間1000件前後起こっています。
2020年以降の減少は、新型コロナウイルスの影響で外食の機会が少なくなったからと、推測できます。

年次事件数患者数死者数
20151,20222,7186
20161,13920,25214
20171,01416,4643
20181,33017,2823
20191,06113,0184
202088714,6133
202171711,0802
20229626,8565

【原因施設別(事件数)】

飲食店での事件数が過半数を占めています。
※新型コロナウイルスの影響で、2020年以降は減少しています。

年次事件数家庭飲食店その他
20151,202117742343
20161,139118713308
20171,014100598316
20181,330163722445
20191,061151580330
2020887166375346
2021717106283328
2022962130380452

【原因施設別(患者数)】

一件の事件に対しての患者数が多くなることも飲食店の特徴です。

年次患者数家庭飲食店その他
201522,71830212,7349,682
201620,25223411,1358,883
201716,4641798,0078,278
201817,2822248,5808,478
201913,0183147,2885,416
202014,6132446,9557,414
202111,0801562,6468,278
20226,8561833,1063,567

【原因食品別(事件数)】

食品別でみると、魚介類での食中毒が高い割合です。
・「肉類」には加工品も含まれています。
・「野菜類」には加工品も含まれています。
・「その他」には卵、乳製品、菓子、複合、不明などが含まれています。
(※複合とは、コロッケなどの2種以上の材料でできたものを指します)

スクロールできます
年次事件数魚介類肉類野菜類その他
20151,2022096448881
20161,1391738070816
20171,0141966127730
20181,3304146534817
20191,0612735846684
20208872992843517
20217172233129434
20229623842935514

【原因食品別(患者数)】
多くの割合を占める「その他」の内、食品を断定できていない場合が大半です。

スクロールできます
年次患者数魚介類肉類野菜類その他
201522,7181,63257419020,322
201620,2521,1121,06761916,454
201716,46446963829514,062
201817,2821,20945121615,406
201913,01882982625911,104
202014,61371168216112,059
202111,08033515821210,375
20226,8567452272254,659

【原因物質別(事件数)】

近年では、アニサキスによる食中毒が増加傾向です。
ただし、事件数と患者数がほぼ同数であることから、家庭での発生も多いと推測できます。

年次事件数サルモネラぶどう大腸菌ウエルシュカンピロノロウイルスアニサキス
2015120224332321318481127
2016113931362031339354124
2017101435222827320214230
2018133018264032319256468
2019106121232722286212328
20208873321112318299386
2021717818143015472344
20229622215102218563566
スクロールできます
年次事件数サルモネラぶどう大腸菌ウエルシュカンピロノロウイルスアニサキス
2015120224332321318481127
2016113931362031339354124
2017101435222827320214230
2018133018264032319256468
2019106121232722286212328
20208873321112318299386
2021717818143015472344
20229622215102218563566

【原因物質別(患者数)】

年次

サル
モネ
ぶどう

ウエ
ルシ
カン
ピロ
ノロ
ウイルス
アニサキス
201522,7181,9186195185512,08914,876133
201620,2527046988211,4113,27211,397126
201716,4641,1833361,2141,2202,3158,496242
201817,2826404058602,3191,9958,475478
201913,0184763935381,1661,9376,889336
202014,6138612606,3141,2889013,660396
202111,0803182852,3001,9167644,733354
20226,8566982312781,4678222,175578
スクロールできます
年次患者数サルモネラぶどう大腸菌ウエルシュカンピロノロウイルスアニサキス
201522,7181,9186195185512,08914,876133
201620,2527046988211,4113,27211,397126
201716,4641,1833361,2141,2202,3158,496242
201817,2826404058602,3191,9958,475478
201913,0184763935381,1661,9376,889336
202014,6138612606,3141,2889013,660396
202111,0803182852,3001,9167644,733354
20226,8566982312781,4678222,175578

【基本】食中毒の種類を知ろう~特徴や症状~

【食中毒の分類】

  • 細菌性
  • ウイルス性
  • 自然毒
  • 化学物質
  • 寄生虫

【食中毒菌の増殖条件】

  • 栄養:食品自体、器具の汚れ
  • 温度:10~60℃で増殖、36℃前後が最も増殖
  • 水分:食品中の水分で増殖
  • 時間:細胞分裂によって倍々に増殖

【細菌の予防三原則】

  • 付けない:「清潔・洗浄」
  • 増やさない:「迅速・冷却」
  • やっつける:「加熱・消毒」

(75度以上かつ、1分以上の加熱)

【ウイルスの予防四原則】

  • 持ち込まない:「健康管理、医療機関の受診」
  • 付けない:「手洗い徹底、相互汚染防止」
  • 増やさない:「迅速・冷却」
  • やっつける:「加熱・消毒」

(ノロウイルスは90度以上かつ、90秒以上加熱)

その他:使い捨て手袋の着用、乾燥も有効です。

サルモネラ菌

菌名サルモネラ属菌
特徴鶏や豚などの腸管や自然界に広く分布
血清型が2,500種類以上
乾燥に強い
拡大時期夏(6~10月)
温暖な環境が好適
高湿度、高気温の条件下で活発に増殖
発症時間6〜72時間
症状腹痛、嘔吐、下痢、発熱(38℃~40℃)など
小児や高齢者の場合は脱水症状により重篤な状態に
長期間排菌するため注意
原因食品生肉、生卵、生乳、未加熱の鶏肉
うなぎ、スッポン
ネズミやペット動物
予防対策二次汚染防止
生を避け、十分な加熱調理
冷蔵保管
菌名サルモネラ属菌
特徴鶏や豚などの腸管
血清型が2,500種類以上
乾燥に強い
拡大
時期
夏(6~10月)
温暖な環境が好適
高湿度、高気温で活発に増殖
発症
時間
6〜72時間
症状腹痛、嘔吐、下痢、発熱など
重症は脱水症状
長期間排菌する
原因
食品
生鶏肉、生卵、生乳
うなぎ、スッポン
ネズミやペット動物
予防
対策
二次汚染防止
十分な加熱調理
冷蔵保管

黄色ブドウ球菌

菌名黄色ブドウ球菌
特徴人や動物の皮膚や粘膜に常在
エンテロトキシンというの毒素を産生
100℃30分の加熱にも無毒化されない
低温に弱い
拡大時期高温多湿の夏場
発症時間30分~6時間程度
食中毒の中で最も潜伏期間が短い
症状嘔吐、腹痛、下痢など
通常24時間以内に改善
脱水症状や血圧低下などの重症化もある
原因食品手で触れる加工食品
(おにぎり、サンドイッチ、弁当など)
予防対策手洗いや消毒、手袋の着用を徹底
冷蔵保管
十分な加熱調理
菌名黄色ブドウ球菌
特徴人や動物の皮膚や粘膜に常在
エンテロトキシン毒素を産生
100℃30分の加熱に耐える
低温に弱い
拡大
時期
高温多湿の夏場
発症
時間
30分~6時間程度
最も潜伏期間が短い
症状嘔吐、腹痛、下痢など
通常24時間以内に改善
脱水症状や血圧低下などの
重症化もある
原因
食品
手で触れる加工食品
(おにぎり、弁当、
サンドイッチなど)
予防
対策
手洗いや消毒、
手袋の着用を徹底
冷蔵保管
十分な加熱調理

大腸菌O-157

菌名大腸菌O-157
特徴牛などの家畜の腸内に生息
ベロ毒素という強力な毒素を産生
拡大時期夏季や暖かい気候下で増殖が促進
高温多湿の初夏から初秋
発症時間3~8日程度
症状頻回の水様便、激しい腹痛、血便など
重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症
原因食品生肉や生卵、肉類加工品
未加熱の牛乳、野菜など
予防対策食材の十分な加熱
手洗いや調理器具の衛生管理
生食の避けることが重要
菌名大腸菌O-157
特徴牛などの家畜の腸内に生息
ベロ毒素という強力な毒素を産生
拡大
時期
夏季や暖かい気候下で増殖
高温多湿の初夏から初秋
発症
時間
3~8日程度
症状頻回の水様便、
激しい腹痛、血便など
溶血性尿毒症症候群や
脳症など(重症)
原因
食品
生肉や生卵、肉類加工品
未加熱の牛乳、野菜など
予防
対策
食材の十分な加熱
手洗いや調理器具の衛生管理
生食の避けることが重要

ウエルシュ菌

菌名ウエルシュ
特徴食品中で発芽し、熱に強い芽胞を作る
酸素が少ない状態で増殖
拡大時期春から秋
年間通じて発生する
5月に最も多く発生
発症時間6~24時間
症状腹痛、下痢、嘔吐、発熱など
原因食品煮込み料理が多い
カレーやシチュー、スープ、麺つゆなど
大量調理・作り置きされた食品
予防対策前日調理は避ける
速やかに冷却
小分けにして保存
菌名ウエルシュ
特徴熱に強い芽胞を作る
酸素が少ない状態で増殖
拡大
時期
通年
5月に最多
発症
時間
6~24時間
症状腹痛、下痢、嘔吐、発熱など
原因
食品
煮込み料理
カレーやシチュー、
スープ、麺つゆなど
大量調理・作り置きの食品
予防
対策
前日調理は避ける
速やかに冷却
小分けにして保存

カンピロバクター

菌名カンピロバクター
特徴細菌性最多
30℃以下で発育しない
拡大時期通年
発症時間1~7日
症状腹痛、激しい下痢、嘔吐、発熱など
まれにギランバレー症候群
原因食品生の鶏肉
 (鶏刺し、鶏たたきなど)
予防対策生肉の管理徹底
器具消毒、手洗い
十分な加熱
菌名カンピロバクター
特徴細菌性最多
30℃以下で発育しない
拡大
時期
通年
発症
時間
1~7日
症状腹痛、激しい下痢、
嘔吐、発熱など
まれにギランバレー症候群
原因
食品
生の鶏肉
 (鶏刺し、鶏たたきなど)
予防
対策
生肉の管理徹底
器具消毒、手洗い
十分な加熱

ノロウイルス

菌名ノロウイルス
特徴非常に強い感染力を持つ
人の腸内で増殖する
拡大時期11月から2月にかけての冬場がピーク
発症時間12~48時間で急激に発症
症状嘔吐、下痢、発熱、悪寒、筋肉痛など
通常、1~2日で治癒する
乳幼児や高齢者などは脱水症状や重症化
原因食品特に加熱不十分な二枚貝
感染者の二次汚染
予防対策90℃以上90秒以上の加熱
感染者との接触回避
菌名ノロウイルス
特徴非常に強い感染力
人の腸内で増殖
拡大
時期
冬場がピーク
発症
時間
12~48時間で急激に発症
症状嘔吐、下痢、発熱、
悪寒、筋肉痛など
通常、1~2日で治癒する
重症化は脱水症状
原因
食品
特に加熱不十分な二枚貝
感染者の二次汚染
予防
対策
90℃以上90秒以上の加熱
感染者との接触回避

アニサキス

菌名アニサキス
特徴長さ2~3cm、白色の糸状の寄生虫
胃壁や腸壁に刺入して炎症を起こす
拡大時期季節を問わず発生
10月に最多となる傾向
発症時間数時間後から数日後
症状激しい腹痛、悪心、嘔吐
重症化するとアナフィラキシーショック
原因食品生食や生焼けの魚介類
サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなど
予防対策新鮮な魚介類
十分な加熱調理
冷凍する(-20℃で24時間以上)
菌名アニサキス
特徴長さ2~3cmで
白色の糸状の寄生虫
胃壁や腸壁に炎症を起こす
拡大
時期
季節を問わず発生
10月に最多となる傾向
発症
時間
数時間後から数日後
症状激しい腹痛、悪心、嘔吐
重症化はアナフィラキシーショック
原因
食品
生食や生焼けの魚介類
サバ、アジ、サンマ、カツオ、
イワシ、サケ、イカなど
予防
対策
新鮮な魚介類
十分な加熱調理
冷凍する(-20℃で24時間以上)

HACCPとは何か?|食中毒を防ぐための衛生管理システム

HACCP(ハサップ)とは、世界中で使われている食品の安全性を確保するためのルールです。

HACCPの目的は、消費者に安全な食べ物を届けること。
つまり、食品の生産から消費までの全工程において、危害要因を見つけて、適切に管理して、食中毒や異物混入を防止することです。

2021年6月1日から義務化
HACCPは原則として、すべての食品等事業者に義務化されました。

食に携わる上で避けて通れないのが『HACCP』です。

厚生労働省のホームページにHACCPについて、情報が公開されています。
より詳細な情報は「HACCP(厚生労働省)」をご覧ください。

ここでは、簡単に分かりやすく解説します。

HACCPの7つの原則と12の手順

まず、HACCPの導入の際は、以下の7つの原則に基づき、12の手順で実施します。

《MEMO:HAとCCP》
HA:危険要因の把握
CCP:重要管理点

【原則1】危害要因分析の実施
工程ごとに、発生する可能性のある危害要因を探して、頻度や深刻度を分析する。

【原則2】CCPの決定
危害要因を排除・低減するために、特に重要な工程を決定する。
(加熱殺菌、金属探知など)

【原則3】管理基準の設定
CCPが害のない水準になるように、基準を設ける。
(温度、時間など)

【原則4】モニタリング方法の設定
基準が守られているかどうかを監視する方法を決める。
(計器、方法、頻度など)

【原則5】改善措置の設定
基準を満たしていない場合、どうするかを決めておく。
(破棄、再加熱など)

【原則6】検証方法の設定
適切に管理されているか、修正が必要かどうか
定期的に検証する。
(内外部監査、微生物検査など)

【原則7】記録と保存方法の設定
各工程ごとに記録を残し、保管しておく。
(原因究明、証拠)

【12の手順】

  1. HACCPチームの編成
  2. 製品説明書の作成
  3. 意図する用途及び対象となる消費者の確認
  4. 製造工程一覧図の作成
  5. 製造工程一覧図の現場確認
  6. 危害要因分析の実施
  7. 重要管理点(CCP)の決定
  8. 管理基準(CL)の設定
  9. モニタリング方法の設定
  10. 改善措置の設定
  11. 検証方法の設定
  12. 記録と保存方法の設定

手順1~5はHACCP導入の前準備、
手順6~12は原則1~7と重複し、導入の手順を示しています。

HACCPのメリット

次に、HACCPを実践することのメリットを挙げます。

  • 食中毒の予防:食品の安全性を科学的に分析し、管理することで、食中毒の発生を最小限に抑えることができます。
  • 顧客の信頼:HACCPの証明書やロゴを表示することで、顧客に食品の安全性をアピールすることができます。
  • コストの削減:食品の廃棄や再処理を減らすことで、コストを削減することができます。
  • 品質の向上:食品の品質を一定の水準に保つことで、顧客の満足度を向上させることができます。
  • 法令の遵守:HACCPは、食品衛生法や食品安全基本法などの法令に準拠することができます。

小規模事業者|街の中の飲食店のHACCP

最後に、多くの板前が該当するであろう規模の小さな飲食店について解説します。

これまで述べてきたHACCPに関しての内容は、大規模な企業を想定しています。
例えば、食品製造工場やチェーンレストランのセントラルキッチン、学校・病院の給食などです。

【小規模事業の対象者】

①食品を製造や加工をして、併設あるいは隣接された店舗で販売する者。
(豆腐の製造販売、魚介類の販売 など)
②飲食店又は喫茶店の営業を行う者。
(居酒屋、カフェ など)
③容器包装された食品のみを貯蔵や運搬、販売する者。
④食品を分割して容器包装して小売販売する営業者
(八百屋、コーヒーの量り売り など)
⑤食品工場などで、食品等の取扱いに従事する者の数が50人未満である事業場
(事務職員等は含まない)

【実施内容】

  1. 手引書の解説を読み、危害要因を理解する。
  2. 衛生管理計画を作成する。
  3. 従業員に内容を周知する。
  4. 実施状況を記録する。
  5. 記録を保存する。
  6. 必要に応じて衛生管理計画を見直す。

《MEMO:手引書とは?》
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理に取り組む際に参考となる資料で、食品等事業者団体が作成し厚生労働省が確認したものです。

【食中毒のまとめ】プロとしての自覚

この記事では、

  • 食中毒のリスク
  • 食中毒を防ぐことの重要性
  • 食中毒菌の知識
  • HACCP

などについて解説してきました。

まず、料理に携わる板前が肝に銘じておくことは、
「食中毒は命を失う危険と、店の信頼性を著しく低下させる可能性がある」ということです。

その上で、「食中毒を未然に防ぐための正しい知識を学ぶ」必要があります。

さらに、最も大切だともいえるのは、「知識を実践する」ことです。

手洗いをサボる度に、誰かが注意してくれるわけではありません。
他人に言われなくても、自ら行動、実践できる者がプロフェッショナルです。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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