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【出汁の基礎知識】日本料理の旨味と風味を引き立てる秘密

出汁は日本料理の核となる存在です。

その深い旨味と豊かな風味は、どんな料理にも欠かせない要素です。

しかし、出汁にはさまざまな種類があり、それぞれが料理の味わいに異なる影響を与えます。

本記事では、出汁の重要性や種類、そして一番出汁と二番出汁の違いについて詳しく解説します。

この記事を書くのはプロの板前!

  • 板前一筋22年、料理長経験
  • 東京都ふぐ免許保有
  • 都心の料亭やミシュラン獲得店、会員制クラブなどに勤務

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目次(INDEX)

出汁の重要性

出汁は日本料理において極めて重要な要素です。素材の味を引き立て、料理に深みやコクを与えます。

出汁の役割

  1. 旨味の強化: 出汁はグルタミン酸やイノシン酸などの旨味成分を含み、料理全体の味を豊かにします。
  2. 風味の基盤: 出汁は多くの日本料理の基盤として使われ、その風味が料理の味を決定づけます。
  3. 調和とバランス: 出汁を使うことで、さまざまな食材の味を調和させ、全体のバランスを取ります。

出汁の種類と旨味成分

出汁の旨味成分は、いくつかの種類があり、素材によって異なります。

旨味成分

旨味成分含まれる素材
イノシン酸鰹節、煮干し、肉類
グルタミン酸昆布、トマト、玉ねぎ
グアニル酸干し椎茸、キノコ類
コハク酸日本酒、貝類

【鰹節の種類】カビ、部位、血合いで分類

カツオを煮て、焙乾、カビ付けをする鰹節にはいくつかの種類があります。

  • カビ付け工程の有無
  • 部位
  • 血合いの有無

MEMO:焙乾(ばいかん)
燻製と乾燥の工程。
水分量を減らし、旨味の凝縮と腐敗の防止を行う。

鰹節の種類特徴
荒節
あらぶし
カビ付け工程なし
枯節
かれぶし
カビ付け工程あり
本枯節
ほんかれぶし
3~4回カビ付け
雄節・女節
めぶし
腹側の節
雌節・男節
おぶし
背側の節
血合いあり血合いを取り除かない節
血合いなし血合いを取り除いた節

雌節、雄節はカツオ自体のオス、メスとは無関係です。
また、通常は雌節、雄節を混ぜてあります。

荒節(あらぶし)の特徴

  • 製造方法: 鰹を燻して乾燥させたもの。表面は黒くタールが付着。
  • 香り: こうばしさがあり、強い香りが特徴。
  • : 味のインパクトが強く、酸味や渋みがやや感じられる。
  • 特徴: 魚っぽさが残り、口に含んだときの風味がすぐに消える。

枯節(かれぶし)の特徴

  • 製造方法: 荒節にカビを付けてさらに乾燥、発酵させたもの。表面は茶色くカビが付着。
  • 香り: 荒節よりも柔らかく、スッキリとした香り。
  • : 魚臭さが抑えられ、うまみが増す。酸味や渋みが少なく、うまみが持続する。
  • 特徴: 口の中でうまみが長く残る。風味が柔らかで丸い。

本枯節(ほんかれぶし)の特徴

  • 製造方法: 枯節にさらに繰り返しカビを付け、さらに乾燥させたもの。
  • 香り: より上品で優しい香りが特徴。
  • : 雑味が少なく、うまみが濃厚でありながら渋みがほとんどない。
  • 特徴: 高級品とされ、だしは料亭のような上品な味わいに仕上がる。

雌節(めぶし)の特徴

  • 部位: 鰹の腹側を加工した鰹節
  • 形状: 丸みを帯び、内臓を除去したくぼみがある
  • 脂肪分: 脂肪が多く、旨味が強い
  • 色合い: 出汁を引くと濁りが出やすい
  • おすすめの用途: 濃い味付けの煮物や麺つゆなど、コクのあるダシが必要な料理に適している

雄節(おぶし)の特徴

  • 部位: 鰹の背側を加工した鰹節
  • 形状: まっすぐ伸びた形状で、サイズが大きい
  • 脂肪分: 脂肪が少なく、すっきりした香り
  • 色合い: 出汁を引くと透明感がある
  • おすすめの用途: お吸い物や冷やっこへのトッピングなど、薄味の料理に適している

血合ありの特徴

  • 色合い: ピンク色の中に茶色い部分が残る
  • 風味: 鰹の風味が強く、生臭さが感じられることもある
  • 栄養価: 栄養価は「血合なし」とほとんど変わらない
  • 用途: 味噌汁や麺つゆ、煮物など
  • 価格: 一般的に安価で、スーパーでも多く流通している

血合なしの特徴

  • 色合い: 全体が綺麗なピンク色で、見た目が美しい
  • 風味: 生臭みが抑えられ、上品でさっぱりとした味わい
  • 栄養価: 「血合あり」と同程度の栄養価
  • 用途: お吸い物や祝い事の料理など、上品な和食に向いている
  • 価格: 「血合あり」よりも高価で、流通量も少ない

【昆布の種類】

昆布にはさまざまな種類があります。

出汁を取るための昆布としては、利尻昆布、羅臼昆布、日高昆布、真昆布が代表的です。

昆布の産地は、ほぼ全てが北海道です。

昆布の種類特徴
真昆布
まこんぶ
上品で甘味のある出汁
羅臼昆布
らうすこんぶ
濁りやすく濃厚な出汁
利尻昆布
りしりこんぶ
香り高く澄んだ出汁
日高昆布
ひだかこんぶ
少し濁り旨味弱めの出汁

真昆布(まこんぶ)

  • 産地: 函館沿岸(北海道南部)
  • 特徴:
    • 厚みがあり、幅が広い
    • 上品な甘味を持ち、清澄な出汁が取れる
    • 高級品として知られる
  • 用途:だし昆布、佃煮、塩昆布など

羅臼昆布(らうすこんぶ)

  • 産地: 羅臼沿岸(北海道東部)
  • 特徴:
    • 茶褐色で柔らかく、香りが良い
    • 黄色味で濁りやすく濃厚でコクのある出汁が取れる
    • 「だしの王様」とも呼ばれる
  • 用途:だし昆布、おやつ昆布、佃煮など

利尻昆布(りしりこんぶ)

  • 産地: 利尻・礼文・稚内沿岸(北海道北部)
  • 特徴:
    • 真昆布に比べてやや固め
    • 透明で風味の良い出汁が取れ、会席料理などに使われる
  • 用途:
  • だし昆布、塩昆布、湯豆腐など

日高昆布(ひだかこんぶ)

  • 産地: 日高沿岸(北海道南部)
  • 特徴:
    • 「三石昆布」とも呼ばれる
    • 濃い緑に黒味を帯びており、柔らかく煮えやすい
    • 紹介した4種類の中で最も安価
  • 用途:
  • 佃煮昆布、昆布巻、おでん用、だし昆布など

一番出汁と二番出汁

一番出汁は、昆布や鰹節などを煮出して取る一回目の出汁で、風味や旨味も強く、上品な味わいが特徴です。

二番出汁は、一番出汁を取った後の昆布や鰹節を再度煮出して取る二回目の出汁です。風味は落ちますが、旨味は残っており、煮物や汁物などに使われます。

スクロールできます
特徴一番出汁二番出汁
見た目
琥珀色~黄金色薄茶色
香り強い弱い
味わい上品で繊細な旨味旨味と雑味
用途薄い味の料理
(吸い物、茶碗蒸しなど)
濃い味の料理
(味噌汁、煮物など)

一番出汁

  • 見た目・色: 琥珀色や黄金色で、非常に澄んだ出汁。
  • 香り: 強く香り高い。火を使わずに抽出するため、香りが飛びにくい。
  • 味わい: 上品で繊細な旨み。特に鰹節と昆布の合わせだしでは、イノシン酸とグルタミン酸の相乗効果で深い味わいが得られる。
  • 用途: お吸い物、すまし汁、茶碗蒸し、だし巻き卵、おひたしなど、素材の味を活かす薄味の料理に適している。

≫一番出汁の取り方

二番出汁

  • 見た目・色: 薄茶色で、一番出汁に比べて色が薄い。
  • 香り: 香りは一番出汁よりも弱い。煮出すことで香りが飛びやすいが、追いがつおで補うことが可能。
  • 味わい: 強い旨みが特徴だが、雑味も感じられる。煮出すことで旨みが引き出されるが、強火で煮ると雑味が増えるので注意が必要。
  • 用途: 味噌汁、そばつゆ、うどん、煮物、炊き込みご飯など、濃い味付けの料理に適している。

出汁まとめ

出汁は日本料理の奥深さを象徴する存在であり、その種類や使い方によって料理の味わいが大きく変わります。

鰹節や昆布などから取れる出汁は、旨味成分が豊富で、料理にコクと深みを加えます。

特に一番出汁と二番出汁は、それぞれ異なる特徴を持ち、使い分けることで、より繊細でバランスの取れた味わいが実現します。

出汁を理解することで、より料理が奥深く、より豊かに表現することができます。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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