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【料理は安心安全が最優先】調理場のリスクを完全網羅!事故ゼロを目指す

【安全第一・安心第一】を当たり前に!

新人の板前

いってー!包丁で指切ったー

調理場は、常に刃物や火を扱い、危険と隣り合わせの場所です。さらに手間ひまかけて作った料理にも食中毒やアレルギーなどのリスクも潜んでいます。

調理場内での事故は、ほんの少しの知識と意識大半を未然に防ぐことができます。

・正しい知識
・徹底した声かけ
・分かりやすい注意事項の周知
・チームワークによる協力体制

いかなる時も、料理人の安全お客様の安心を最優先に考えることが重要です。

この記事では、調理場のあらゆる危険ポイントを網羅し、事故が起こる原因と対策を徹底解説します。

この記事を書くのはプロの板前!

  • 板前一筋22年、料理長経験
  • 東京都ふぐ免許保有
  • 都心の料亭やミシュラン獲得店、会員制クラブなどに勤務

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すべての危険を完全に排除することは不可能ですが、原因と対策を知り実践することで、安心安全な料理を提供することができます。

ここで紹介する方法は一例であり、調理場の状況や作業内容に合わせて最適な対策を検討することが大切です。

目次(INDEX)

アレルギー

アレルギーとは、本来無害な物質に対して、体の免疫システムが過剰に反応することです。

主な症状は様々ありますが、

  • 皮膚の発疹
  • 目のかゆみ
  • 鼻水

などの軽度なもの。

  • 呼吸困難
  • アナフィラキシーショック

など、重い場合には命に関わることもあるため注意が必要です。

MEMO:アナフィラキシーショックとは
急速にあらわれる重篤なアレルギー反応。
かゆみ、発疹、呼吸困難、嘔吐、血圧低下、意識障害などが数分から数時間内に進み、一刻も早く治療する必要がある。

【具体例】
小麦アレルギーのお客様に、小麦を使った料理を提供し、アナフィラキシーショックを起こしてしまった。

【原因とその対策】

原因対策
知識や危機感の不足勉強、研修などの実施
情報共有が不十分確実な情報共有
洗浄、消毒の不備的確な洗浄、消毒の徹底

食中毒

予防の3原則は「付けない・やっつける・増やさない」です。
飲食に携わる人として、食中毒の正しい知識は不可欠と言えます。
腹痛や下痢、発熱などの症状を引き起こし、幼児や高齢者は重症化しやすいので、特に注意が必要です。

【具体例】
二枚貝(カキ)の生食でノロウイルスの食中毒が発生してしまった。

【原因とその対策】

原因対策
ずさんな衛生管理マニュアル作成&周知
知識、意識不足衛生教育、検査の実施
加熱不足適正温度、時間での加熱

食中毒を詳しく

一酸化炭素中毒

一酸化炭素中毒は、無色無臭のガスのため、気づかないうちに中毒症状が現れ、重症化すると死に至る危険性があります。
特に、換気の悪い場所でのガス機器の使用には注意が必要です。

一酸化炭素中毒の症状

  • 頭痛
  • 吐き気
  • めまい
  • 倦怠感
  • 意識障害

【具体例】
冬の寒い時期、暖気のために換気扇を回さずに調理場のガスコンロを使用していたところ、一酸化炭素中毒を起こし、意識不明の重体となった。

【原因とその対策】

原因対策
換気の悪い場所で
ガス機器を使用する
換気扇を回す
窓を開ける
ガス機器の
不完全燃焼
定期的な点検
整備を行う
ガス漏れガス漏れ警報器を
設置する

火災

火災は、油の加熱し過ぎや電気火災などでも発生します。
調理場は可燃物も多く、瞬時に炎が燃え広がり危険です。
適切な注意と対策を怠ると、重大な事故につながる可能性があります。

【具体例】
調理中に油の温度が高くなり過ぎたことに気づかず、油から炎が上がり、キッチン全体に燃え広がる火災が発生した。

【原因とその対策】

原因対策
油の加熱し過ぎ温度計を使用
適切な温度を管理
揚げ物の放置調理中は目を離さない
燃え広がりを
防ぐための対策
燃えやすいものを
周囲に置かない
消火器の設置すぐに使える場所に
消火器を設置する

MEMO:揚げ物火災の初期消火
①慌てない
②コンロの火を止める
③鍋の蓋をする
④消火器で消火する
絶対に水をかけない
火のついた油に水をかけると火災が拡大する

グリストラップ

グリストラップは調理場内の排水から油やゴミを除き、下水道に流すための装置のことです。
主に、床下に設置され定期的な清掃が必要となります。
その汚水の槽に落下し、死亡する事故が過去に数回起こっています。

【具体例】
1人でグリストラップの清掃をしていたが、足を滑らせ頭から落下。肩が槽にハマり抜け出すことができず溺死した。

【原因】

原因対策
1人で清掃必ず2人以上で
清掃する
しゃがんで
覗き込むような姿勢
長い柄の清掃用具
立ったまま

大型のものだと浴槽よりも大きく危険です。
簡易的な清掃に留め、専門業者に依頼することも検討すべきでしょう。

包丁・刃物

包丁・刃物は、調理において欠かせない道具ですが、使い方を誤れば重大な事故につながる危険性があります。
切り傷や刺し傷だけでなく、指の切断や腱の損傷など、後遺症が残るような重篤なケガをする可能性もあります。

【具体例】

  • 包丁を研いでいる際に刃が滑って指を深く切る
  • 包丁を落として足に刺さる

【原因とその対策】

原因対策
刃物の取り扱い
不注意
正しい持ち方や切り方の習得
作業に集中
周囲に注意を払う
刃物の劣化刃こぼれや欠けの確認
必要に応じて研ぎ直す
疲労や睡眠不足十分な睡眠と休息をとる
体調が悪いときは
無理に作業しない

MEMO:切り傷の応急処置
洗浄:汚れや異物を流水で洗う
止血:清潔なガーゼや布で傷口を圧迫し、心臓より高く持ち上げる
消毒:消毒液で傷口を消毒する
保護:傷口をガーゼや絆創膏

MEMO:医療機関を受診する目安
以下のような場合はすぐに病院に。
・傷口が深い
・出血が止まらない
・傷口が化膿している
・発熱がある

ミキサー・スライサー

機械の高速回転する刃は、不注意で重大な事故につながります。感電や切断、重度の打撲など、後遺症が残るケースも少なくありません。

【具体例】

  • 食材を投入する際に誤って手を入れ、刃に巻き込まれてしまう。
  • 故障したミキサーを使用し、感電してしまう。
  • 清掃中に刃が飛び跳ねて、目に当たってしまう。

【原因とその対策】

原因対策
使用前の
確認不足
使用前に必ず説明書を確認
安全装置の有無
使用方法を理解
不適切な
使用方法
刃の向きや食材の量など
使用方法を守って使用する
清掃・点検の
怠り
使用後は毎回洗浄し
定期的に点検・修理を行う
老朽化新しいものに交換
複数人で
作業する際の
連携不足
互いの作業状況を把握
声をかけ合う

滑る床

調理場では、水や油で床が滑りやすくなっています。油断していると転倒し、大けがや骨折、最悪の場合には死亡事故にもつながる可能性があります。

【具体例】

  • 調理中に床が滑って転倒し、手首を骨折してしまった。
  • 重い鍋を持って移動中に足を滑らせ、鍋を落として火傷を負ってしまった。
  • 冷蔵庫から食材を取り出そうとして転倒し、頭を打って意識を失ってしまった。

【原因とその対策】

原因対策
水や油で床が滑る床をこまめに掃除
床材が古く
足場が悪い
耐水耐滑性の靴を履く
荷物を
持ちすぎている
必要最低限の荷物だけを持つ

重たい物を持ち上げる

重たい物を持ち上げると、腰痛やぎっくり腰などの原因となります。
また、バランスを崩して転倒し、骨折などの重傷を負う可能性もあります。

【具体例】

  • 食材の入った段ボール箱を持ち上げようとしたら、腰を痛めてしまった。
  • 重たい鍋を持ち上げようとしたら、バランスを崩して転倒し、手首を骨折してしまった。

【原因とその対策】

原因対策
無理な持ち上げ方2人以上で持ち上げる
台車を使う
腰への負担腰痛ベルトを着用
正しい姿勢で持ち上げる

熱中症

高温多湿な環境下での作業は、熱中症のリスクを大きく高めます。
重症化すれば命に関わることもあるため、十分な対策が必要です。

【具体例】
忙しい時間帯に水分補給する暇もなく、調理場で熱中症により倒れてしまった。

【原因とその対策】

原因対策
高温多湿な環境エアコンの適切な使用、換気
脱水症状こまめな水分補給
(スポーツドリンクなど)
体調不良無理な作業の回避
休憩の徹底
睡眠不足十分な睡眠

MEMO:熱中症の症状
めまい、頭痛、吐き気、体温上昇など
重症化の場合、意識障害、けいれん、脱水症状などになり、命に関わることもある
熱中症の疑いがある場合は、涼しい場所で体を休ませ、水分を補給し、必要に応じて医療機関を受診する

冷蔵・冷凍庫閉じ込め

業務用のウォークイン冷蔵・冷凍庫は閉じ込められる可能性があります。
密閉空間で窒息や低体温症、凍死のリスクがあり大変危険です。

【具体例】

深夜時間帯に業務用冷凍庫内に閉じ込められ、翌朝凍死しているのが発見された。

【原因とその対策】

原因対策
不注意非常時の連絡手段の確保
ドアの故障非常用脱出装置の確認

強力な業務用洗剤

業務用の洗剤は非常に洗浄力が強く、人体にも有害です。
誤った使用法による中毒や皮膚炎、火傷などの可能性があります。

【具体例】

  • 洗剤を誤って飲み込んでしまい、嘔吐や下痢などの症状を引き起こした
  • 強力な洗剤を素手で扱い、皮膚がただれてしまった。
  • アルコール類の消毒液を誤って火の近くで使用し、引火してしまった。
  • 塩素系と酸性の洗剤を混ぜて使用し、中毒を起こしてしまった。

【原因とその対策】

原因対策
知識やラベルの
確認不足
安全教育
ラベルの徹底確認
混合・使用法・使用量の誤りマニュアル作成、指導の徹底
保護具の未着用ゴム手袋、ゴーグル
マスクの着用

【補足】

  • 洗剤や薬品を使用する際は、必ず正しい使用方法を確認する
  • 使用中は換気をし、使用後は必ず手を洗う
  • 皮膚や目に触れた場合は、すぐに水で洗い流す

包丁の持ち運び

包丁を正しく収納し持ち運びをしないと、ケガをしたり、包丁が破損する可能性があります。
また、正当な理由なく、6cmを超える刃渡りのナイフや包丁類を所持することは、銃刀法違反となります。

【具体例】
転職のため専用ケースに収め包丁を持ち帰ったが、ケースを電車内で落下させ包丁が散乱してしまった。

【原因とその対策】

原因対策
梱包が不十分正しく梱包し
適切に持ち運ぶ
正当な理由がない不必要に持ち歩かない

MEMO:包丁の持ち運び方
直ちに取り出して使用できないような状態で持ち運びする必要があり、具体的には以下のような手順で梱包する。
①包丁の刃は鞘に収める
②全体を新聞紙や段ボールで覆う
③丈夫な布や箱、カバンにしまう

「刃物の梱包に関する」国土交通省ガイドライン

精神的な疲労・ストレス・ハラスメント

調理場は、長時間労働やストレスが多い環境のため、ハラスメントが発生しやすい場所の一つです。
ハラスメントは、職場の雰囲気を悪化させ、従業員の離職や生産性の低下につながるだけでなく、場合によっては法的な責任を問われることもあります。

【具体例】

  • 調理場の先輩から、毎日暴言を浴びせかけられる。
  • パート従業員に対して、正規従業員から差別的な発言や態度をとられる。
  • 上司から、無理な残業や休日出勤を強要される。

【原因とその対策】

原因対策
職場における
コミュニケーション不足
コミュニケーション
研修の実施
ハラスメントに
対する認識不足
ハラスメント
防止研修の実施
相談窓口の
周知不足
相談窓口の設置・周知
明確なルールや
規律の欠如
ハラスメント防止に関する規程の策定

疲労・ストレスを防ぐためのポイント

  • 十分な睡眠と休息をとる
  • 適度な運動をする
  • バランスのとれた食事をとる
  • 趣味や好きなことに時間を費やす
  • 家族や友人と交流する

自分で解決できない、会社側がアクションを起こしてくれない場合、転職することも選択肢の1つです。

転職について

調理場の安全を守るためには、物理的な危険だけでなく、精神的な疲労・ストレスへの対策も重要です。従業員の心身の健康を守ることで、安全で安心な職場環境を作ることができます。

まとめ【安心安全な料理を提供するために】

板前が1日の大半を過ごす調理場は、常に刃物や火などの危険なものに囲まれています。

そのような環境でお客様に料理を提供し、笑顔で帰ってもらうためには、
「安全・安心」が大前提となります。

その「安全・安心」を維持するためには、
ほんの少しの「知識と意識」が必要です。

調理場内のリスク一例
アレルギー、食中毒、一酸化炭素中毒、火災、グリストラップ、包丁・刃物、ミキサー・スライサー、滑る床、重たい物を持ち上げる、熱中症、冷蔵・冷凍庫閉じ込め、洗剤・薬品、包丁の持ち運び、精神的な疲労・ストレス・ハラスメント

1. 知識と意識の向上

  • 食中毒、衛生管理、危険要因などのリスクに関する知識を習得する
  • 安全に関する意識を高め、常にリスクを想定した行動をとる

2. 徹底した声かけ

  • 調理場内のコミュニケーションを密にし、周囲の状況を常に把握する
  • 異常や危険を感じたら、すぐに周囲に声をかける

3. 分かりやすい注意事項の周知

  • 衛生管理マニュアルや安全作業手順書を作成し、分かりやすく周知する
  • 掲示物や研修などを活用し、従業員全員が理解できるようにする

これらの対策を徹底することで、安心安全な料理を提供することができるだけでなく、従業員の健康と安全を守ることもできます。

安全は、一人一人が意識して取り組むことで実現できます。まずは、自分の働くお店の調理場の危険なポイントを確認してみましょう。

※上記はあくまでも一例であり、調理場の状況や作業内容に合わせて、最適な対策を検討することが大切です。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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