
先輩!生のマグロのブロックをサク取りしたいんですけど、やり方がまったくわかりません…教えてください!



まかせて!難しい技術じゃないけど、マグロは高級食材だ。特に生のマグロを大きな塊のまま触る機会が少ないぶん、最初は緊張するかもしれないな。



はい。初めてなので、緊張と興奮が抑えられません。



今回のマグロは、ブロック1つで約70,000円だ。
今日はポイントをしっかり押さえて、丁寧に覚えていこう。



ぎょえー!!
70,000円!!
よろしくお願いします!
通常の飲食店では、冷凍の柵(サク)で納品されることが多く、ブロックの状態から下ろす機会はそう多くありません。
しかし、規模の大きな料理屋や寿司店、あるいは超低温冷凍庫がある店舗では、ブロックからサク取りを行う場面が出てきます。
この作業は、一見むずかしく感じるかもしれませんが、基本を押さえれば誰でも習得できます。
一方で、扱う機会が少ないためイメージトレーニングも大切です。
プロとして身につけておくことで、食材ロスを防ぎ、歩留まりを高める重要なスキルにもなります。


サク取りとは?基本の考え方


「サク取り」とは、マグロのブロック(節)を刺身や寿司などに使いやすい「サク(柵)」の形に切り分ける工程のことです。
マグロは流通形状により、呼び名が異なります。
- ラウンド:釣ったそのままのもの
- セミドレス:内蔵のみを除いたもの
- ドレス:頭と内蔵を除いたもの
- フィレ:3枚に卸したもの
- ロイン:フィレを腹と背に分けたもの
- ブロック:ロインをさらに切り分けたもの
- サク:ブロックをさらに切り分けたもの
長方形のサクは、スジの向きや包丁の入れ方が考慮された“料理に適した形”を意味します。
以下の4つポイントを押さえることが大切です。
- スジの向きを見極める
- 用途に合わせた形状に整える
- 身の厚みを均一にする
- 切り口を美しく仕上げる
スジの向きを見極める


大まかなイメージは、「スジに沿ってサク取りして、刺身にするときにスジを断ち切る」です。
しかし、マグロのスジは、魚体全体に年輪のように複雑に存在し、部位によって太さや方向まで異なります。
そこで、基本的には、頭から尾方向に、中骨に沿ってサク取りします。
用途に合わせた形・サイズにする


刺身、寿司、丼など、提供する料理によって求められるサクのサイズや形は異なります。
平造りか、へぎ造りか、あるいは寿司ネタなのか。どのような料理に仕上げるのかをイメージしましょう。
身の厚みを均一にする
サクの厚みにムラがあると、火の入り具合、味のバランスにも影響します。
特に、刺身に切り出す際、使い勝手の悪さや見た目にも影響します。
切り口を美しく仕上げる
見た目の美しさは価値に直結します。
刃渡りの長い包丁で、なるべく一太刀で引き切ることを意識しましょう。
サクを滑らかな断面にするには、途中で止めたり、ノコギリのように前後に動かしてはいけません。
マグロのサク取りの手順【腹ブロック】
では、ここから実際のマグロのブロックの写真とももに、解説します。


部位によって多少異なりますが、反対側の腹でも、背中側のブロックでもやり方は同じです。


完成のイメージはこんな感じ。
「サク取り」を簡単に説明すると、血合いや骨、皮、膜などいらないものを除いて(=掃除)、繊維に沿って長方形に切り出すのです。
血合いを切り取る


柳刃包丁で血合いのみを外します。内側に入り込んで、切り取りにくい部分はムリに切らず、サク取り後に切ります。


血合いは刺身には向きませんが、鮮度が良いものは臭みもなく食べられます。
賄いや、酒のアテに生姜を効かせた甘辛煮にするのがオススメです。
腹骨、腹の膜を切り取る


腹骨と腹の膜を外します。
奥側は赤身が邪魔して、うまく包丁が入らないので先に天パネします。
天パネする(上下2つに切り分ける)


切り分ける目安の高さは指4本分。この高さがサクの幅になります。
柳刃包丁でためらわずに切りましょう。




天パネした後、再度、腹の部分をしっかり掃除します。


ここでしっかり掃除して、使いやすいサクに仕上げるのが正解です。


マグロの腹骨は深く入り込んでいるため、周りの身を切り取り、骨く抜きで抜きます。
サク取る(赤身)


必要であれば、上下の切り分けを再度行います。新人にやってもらうと、前後は水平でしたが、だんだんと低くなっています。


この後は一定の幅で切るだけ。刃渡りの長い柳刃包丁で一太刀で引き切りましょう。


うまくサク取りができました。
サク取り(トロ身)


腹骨、腹膜が掃除できたら、適切な幅で切り分けていきます。この幅がサクの厚さとなります。
腹の上ブロックでは、頭が近く抜けない大きな骨が残ります。うまく避けながらサク取りしていきます。


この場面の幅が、サクの厚みです。一定の幅にまっすぐ引き切ることを意識しましょう。








おいらの店ではサク取りの時点で更に半分に切り分け、-60℃の超低温冷凍庫で保管します。


食べる前から想像するだけで、もう、うまい。


刺し身にするときは、サクのスジを断ち切るように直角に引きましょう。
マグロのサク取りの手順【背ブロック】
背のブロックでも、基本的な流れは同じです。


腹骨や膜がないため、掃除の手間はかかりません。


初めに、ブロック全体からサク取りのイメージをしましょう。


血合いを外します。


天パネして、テッペンの三角部分(①)を切り取ります。


続いて、水平を意識しながら更に②を切り分けます。


③と④を切り分けるのは難易度が高いため、先に幅の広いサク取りを行います。


サク取り後なら簡単に③と④を切り分けられます。




まとめ|マグロのサク取り
マグロのサク取りは、決して難しい技術ではありません。しかし、高級食材を扱うからこそ、基本に忠実であることが何より大切です。
スジの向き、包丁の入れ方、サクの形や厚みにこだわることで、見た目も味も格段に向上します。
失敗を恐れず、まずは丁寧に“正しい手順”を身体に刻むこと。そして、「美味しく食べてもらう」ことを忘れずに、サク取りを楽しんでください。