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運営者:パプリカ
・板前一筋22年
・ふぐ免許保有
・料亭、ミシュラン店、会員制クラブ勤務
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【失敗しない】マグロのサク取りの基本とコツ|プロの板前のやり方と手順

新人の板前

先輩!生のマグロのブロックをサク取りしたいんですけど、やり方がまったくわかりません…教えてください!

パプリカ先輩

まかせて!難しい技術じゃないけど、マグロは高級食材だ。特に生のマグロを大きな塊のまま触る機会が少ないぶん、最初は緊張するかもしれないな。

新人の板前

はい。初めてなので、緊張と興奮が抑えられません。

パプリカ先輩

今回のマグロは、ブロック1つで約70,000円だ。
今日はポイントをしっかり押さえて、丁寧に覚えていこう。

新人の板前

ぎょえー!!
70,000円!!

よろしくお願いします!


通常の飲食店では、冷凍の柵(サク)で納品されることが多く、ブロックの状態から下ろす機会はそう多くありません。

しかし、規模の大きな料理屋や寿司店、あるいは超低温冷凍庫がある店舗では、ブロックからサク取りを行う場面が出てきます。

この作業は、一見むずかしく感じるかもしれませんが、基本を押さえれば誰でも習得できます。

一方で、扱う機会が少ないためイメージトレーニングも大切です。

プロとして身につけておくことで、食材ロスを防ぎ、歩留まりを高める重要なスキルにもなります。

今回のマグロの納品伝票
目次(INDEX)

サク取りとは?基本の考え方

「サク取り」とは、マグロのブロック(節)を刺身や寿司などに使いやすい「サク(柵)」の形に切り分ける工程のことです。

マグロは流通形状により、呼び名が異なります。

  1. ラウンド:釣ったそのままのもの
  2. セミドレス:内蔵のみを除いたもの
  3. ドレス:頭と内蔵を除いたもの
  4. フィレ:3枚に卸したもの
  5. ロイン:フィレを腹と背に分けたもの
  6. ブロック:ロインをさらに切り分けたもの
  7. サク:ブロックをさらに切り分けたもの

長方形のサクは、スジの向きや包丁の入れ方が考慮された“料理に適した形”を意味します。

以下の4つポイントを押さえることが大切です。

  1. スジの向きを見極める
  2. 用途に合わせた形状に整える
  3. 身の厚みを均一にする
  4. 切り口を美しく仕上げる

スジの向きを見極める

大まかなイメージは、「スジに沿ってサク取りして、刺身にするときにスジを断ち切る」です。

しかし、マグロのスジは、魚体全体に年輪のように複雑に存在し、部位によって太さや方向まで異なります。

そこで、基本的には、頭から尾方向に、中骨に沿ってサク取りします。

用途に合わせた形・サイズにする

刺身、寿司、丼など、提供する料理によって求められるサクのサイズや形は異なります。
平造りか、へぎ造りか、あるいは寿司ネタなのか。どのような料理に仕上げるのかをイメージしましょう。

基本のサクのサイズ
・長さ:20〜30cm
・幅:8〜10cm(指4本分)
・厚さ:1.5〜2cm(親指1本分)

身の厚みを均一にする

サクの厚みにムラがあると、火の入り具合、味のバランスにも影響します。
特に、刺身に切り出す際、使い勝手の悪さや見た目にも影響します

切り口を美しく仕上げる

見た目の美しさは価値に直結します。
刃渡りの長い包丁で、なるべく一太刀で引き切ることを意識しましょう。
サクを滑らかな断面にするには、途中で止めたり、ノコギリのように前後に動かしてはいけません。

マグロのサク取りの手順【腹ブロック】

では、ここから実際のマグロのブロックの写真とももに、解説します。

この写真は左右反転しています。

部位によって多少異なりますが、反対側の腹でも、背中側のブロックでもやり方は同じです。

この写真は左右反転しています。

完成のイメージはこんな感じ。

「サク取り」を簡単に説明すると、血合いや骨、皮、膜などいらないものを除いて(=掃除)、繊維に沿って長方形に切り出すのです。

血合いを切り取る

この写真は左右反転しています。

柳刃包丁で血合いのみを外します。内側に入り込んで、切り取りにくい部分はムリに切らず、サク取り後に切ります。

血合いは刺身には向きませんが、鮮度が良いものは臭みもなく食べられます。

賄いや、酒のアテに生姜を効かせた甘辛煮にするのがオススメです。

腹骨、腹の膜を切り取る

腹骨と腹の膜を外します。

奥側は赤身が邪魔して、うまく包丁が入らないので先に天パネします。

天パネする(上下2つに切り分ける)

切り分ける目安の高さは指4本分。この高さがサクの幅になります。

柳刃包丁でためらわずに切りましょう。

手前だけを見ていると、刃先が下がりやすくなります。包丁全体を水平に保つように意識をして下さい。

天パネした後、再度、腹の部分をしっかり掃除します。

ここでしっかり掃除して、使いやすいサクに仕上げるのが正解です。

マグロの腹骨は深く入り込んでいるため、周りの身を切り取り、骨く抜きで抜きます。

遠洋で水揚げされたマグロは、すぐに船上で冷凍されます。冷凍のままサク取りし流通するため、解凍後に腹骨や皮を掃除します。

サク取る(赤身)

新人の実力。水平でない。

必要であれば、上下の切り分けを再度行います。新人にやってもらうと、前後は水平でしたが、だんだんと低くなっています。

この後は一定の幅で切るだけ。刃渡りの長い柳刃包丁で一太刀で引き切りましょう。

うまくサク取りができました。

サク取り(トロ身)

腹骨、腹膜が掃除できたら、適切な幅で切り分けていきます。この幅がサクの厚さとなります。

腹の上ブロックでは、頭が近く抜けない大きな骨が残ります。うまく避けながらサク取りしていきます。

この場面の幅が、サクの厚みです。一定の幅にまっすぐ引き切ることを意識しましょう。

写真は無加工。おいしそうな色、ツヤです。

おいらの店ではサク取りの時点で更に半分に切り分け、-60℃の超低温冷凍庫で保管します。

食べる前から想像するだけで、もう、うまい。

刺し身にするときは、サクのスジを断ち切るように直角に引きましょう。

マグロのサク取りの手順【背ブロック】

背のブロックでも、基本的な流れは同じです。

腹骨や膜がないため、掃除の手間はかかりません。

初めに、ブロック全体からサク取りのイメージをしましょう。

血合いを外します。

天パネして、テッペンの三角部分(①)を切り取ります。

続いて、水平を意識しながら更に②を切り分けます。

③と④を切り分けるのは難易度が高いため、先に幅の広いサク取りを行います

サク取り後なら簡単に③と④を切り分けられます。

まとめ|マグロのサク取り

マグロのサク取りは、決して難しい技術ではありません。しかし、高級食材を扱うからこそ、基本に忠実であることが何より大切です。

スジの向き、包丁の入れ方、サクの形や厚みにこだわることで、見た目も味も格段に向上します。

失敗を恐れず、まずは丁寧に“正しい手順”を身体に刻むこと。そして、「美味しく食べてもらう」ことを忘れずに、サク取りを楽しんでください。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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