
先輩、松茸ってどう掃除すればいいんですか?水で洗っちゃっていいんですか?



ああ、そうだ。しかし「香り松茸、味しめじ」というように松茸は香りが命だ。水は最小限に土や汚れを落とすんだ。



なるほど…じゃあどうやって汚れを落とせばいいですか?



包丁と柔らかい布で優しく落とすんだよ。香りを守りながら手をかけるのが板前の仕事だ!
松茸は秋の味覚の王様と呼ばれる特別なきのこ。
その魅力は、独特で豊かな香りにあります。しかし、せっかくの香りも掃除の仕方を誤ると台無しに。
下処理の第一歩こそが、松茸の真価を引き出す分かれ道なのです。
この記事では、板前が実際に行う松茸の掃除(下処理)の手順と、その際に大切にしている心構えをお伝えします。
松茸の掃除が大切な理由


松茸の最大の魅力は「香り」です。強い流水で洗うと香り成分が流出しやすく、香りが弱まるため水に触れる時間は最小限で行うのが基本です。
一方で、石づき(根元)や傘のヒダの隙間、表面に残った土や汚れを取り除かないと食感や見た目に影響します。
掃除のしすぎは香りを損ない、きちんと掃除ができていないとジャリジャリしたり、土臭くて台無しになります。
松茸の下処理に必要な道具
通常の厨房にあるもので大丈夫です。
- 包丁:石づきを削ぐための小さめのもの。
- 柔らかい布巾/キッチンペーパー:表面の汚れを拭き取るもの。
特別な道具は必要ありません。
板前が実践する松茸の掃除手順


始めに全体を見て、割れや虫食いがないかの確認をします。


拭いても硬く除けないのが「石づき」、包丁にそぎ落とします。













昔、ついた親方は、この松茸の削りカスを家の庭に撒いて生えてくることを願っていたなぁ…


水洗いする準備、流水で洗う場合は細く水を出します。


濡らした布巾やペーパーで優しくこするように洗う。固まった土や汚れを丁寧に掃除します。


洗い終えたら、軽く布巾で水気を拭き取り、盆ザルなど風通しの良い所に並べます。


濡れたままでは劣化が早いため、扇風機で風を当てて乾かします。


表面の水気が飛んで、サラサラの手触りになればOK。


国産松茸の高騰する中、海外産松茸は貴重な代替。中でもイメージの悪そうな中国産松茸は、国産に近い品質で良品が多くあります。


昔、きのこ狩りで天然松茸や天然ホンシメジ、天然香茸などを採ってきた親方。
その親方はきのこの掃除に【ハケ】を使っていました…
一本一本ハケで土や汚れを落としていくんです…
そのくらい、きのこにとって水分は避けたいもの。しかし、まさに朝からやって日が暮れるまでかかる途方もない作業です。普段の仕事でやるには現実的ではありません。
松茸の掃除の失敗パターン
- 長時間の浸水、水洗い:香りが抜け、風味が落ちる。
- ゴシゴシ強くこする:表面が剥け、見た目を悪くする。胞子や傘の構造を壊し風味が変わる。
- 石づきを大きく切り落とす:食べられる部分を無駄にしてしまう。
短く、優しく、必要最小限が鉄則です。
掃除した松茸の保存方法
- 冷蔵(短期):キッチンペーパーや新聞紙で包み冷蔵。概ね3〜4日までが目安。
- 冷凍(長期):ラップで包み、可能なら真空密封する。
冷凍松茸は「焼き松茸」には不向き。土瓶蒸し・吸い物・煮物など香りを出汁に生かす調理法に向く。
用途が決まっているなら切り分けてから冷凍し、解凍せず凍ったまま使う方が良い。溶け出す香りと味がムダにならず、出汁に溶け出てくれる。
- 掃除して乾かした状態で保存する
- 冷蔵の際のペーパーは毎日交換
- 冷凍は極力空気に触れないよう密封
まとめ|松茸は掃除で香りと旨みが決まる
松茸の下処理は「見た目や食感を向上させ、香りを守るため」であり、手間がかかります。
プロのコツは「余計な水分と乱暴な力を避けること」。それだけで香りと旨みが格段に残ります。



なるほど…松茸の掃除って、ただ洗えばいいわけじゃないんですね。香りを守るための工夫があるんだなぁ。



そうだ。板前の仕事は“余計なことをしない”のも大事な技術なんだ。松茸の香りをそのまま客に届ける――それが最高のごちそうになるんだよ。



はい!僕もその一皿を出せるように、手を抜かずにやります!



よし、その心意気だ。松茸は短い旬しかない。だからこそ、一つひとつを丁寧に扱うんだぞ。