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調理師免許とは?取得方法から試験内容を完全解説【統計から見る現状】

食のプロの証である調理師免許は、調理技術はもちろん、食材の知識、栄養学、衛生管理まで、食に関わる幅広い知識と専門性を証明します。

飲食店で調理の仕事に就くことは免許がなくても可能ですが、「調理師」の名乗れるのは免許保持者だけ

まさに、食のプロとしての誇りと責任が伴う資格と言えるでしょう。

この記事を書くのはプロの板前!

  • 板前一筋22年、料理長経験
  • 東京都ふぐ免許保有
  • 都心の料亭やミシュラン獲得店、会員制クラブなどに勤務

 【詳しいプロフィールはこちら】

このブログ記事では、調理師免許について以下を網羅的に解説します。

  • 定義と目的
  • 役割
  • 取得方法(専門学校 vs 独学)
  • 試験内容
  • 合格率アップのポイント
  • 統計データ

調理師免許は、食に関わる仕事を目指す方にとって、非常に価値のある資格です。

このブログ記事を参考に、ぜひ調理師免許の現状を知っておきましょう。

目次(INDEX)

調理師免許とは:食のプロの証

調理師免許は、厚生労働大臣のお墨付きを得た、食のスペシャリストであることを示す国家資格です。

調理技術はもちろん、食材の知識、栄養学、衛生管理まで、食に関わる幅広い知識と専門性を証明します。

飲食店で調理の仕事に就くことは免許がなくても可能ですが、「調理師」の名乗れるのは免許保持者だけ

まさに、食のプロとしての誇りと責任が伴う資格と言えるでしょう。

【調理師の定義】
「調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者」
【調理師免許制度の目的】
「調理の業務に従事する者の資質を向上させる 調理技術の合理的な発達を図り、国民の食生活の向上に資する」

出典:調理師法

調理師の役割について

調理師は調理業務全般を担い、具体的には以下のような役割です。

  • 食材の衛生管理
  • 献立の作成
  • 調理技術の習得
  • 食品衛生に関する知識の習得
  • 消費者に安全・安心な食を提供すること

免許取得のメリット

調理師免許を取得することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 就職・転職に有利
  • 給与アップ
  • 「調理師」と名乗れること
  • 「食品衛生責任者」の受講が不要

また、上位資格である「ふぐ調理師」「専門調理師」を取るためには「調理師免許」が必須です。

MEMO:食品衛生責任者
飲食店などに必要な衛生管理の担当者で、衛生管理の計画や手順を作成・実施します。
通常は受講が必要ですが、調理師は講習を受けずに食品衛生責任者になれます。

さらに上を目指すための免許

日本料理の調理師には、調理師の上位資格があります。
・「ふぐ調理師」
・「専門調理師」

特に、日本料理の板前にとって「ふぐ調理師免許の取得は当たり前」となる重要な資格免許です。

しかし、ふぐに関する免許制度や試験内容は、都道府県により異なるため注意が必要です。

また、調理師免許は全国に通用するものですが、ふぐに関する免許は各都道府県ごとに取得する必要があります。

調理師免許の取得方法:専門学校 vs 独学

調理師免許を取得するには、以下の2つの方法があります。

1、専門学校を卒業する
2、独学で試験に合格する

専門学校のメリット・デメリット

メリット

  • 確実に免許が取得できる
    • 専門学校を卒業することで、試験は免除され自動的に調理師免許の資格が与えられます。(申請をする必要があります。)
    • 実習も充実しているので、実践的なスキルを身につけることができます。
  • 就職活動に有利
    • 多くの企業が、調理師免許に加えて、専門学校での実習経験を重視します。
    • 専門学校と飲食店などの繋がりから、自分の希望に沿った就職先を斡旋してもらいやすくなります。
  • 仲間と切磋琢磨できる
    • 同じ目標を持つ仲間と学ぶことで、モチベーションを維持しやすくなります。
    • 情報交換や共同作業を通して、互いに刺激を受けながら成長することができます。

デメリット

  • 費用がかかる
    • 学費や寮費、教材費など、トータルで数百万円の費用がかかります。
      *奨学金制度を利用できる場合もありますが、返済の負担が大きくなる可能性もあります。
  • 自分のペースで学べない
    • カリキュラムが決まっているので、自分のペースで進められないことがあります。
    • 理解できない部分があっても、すぐに質問できる環境とは限りません。

独学のメリット・デメリット

メリット

  • 費用を抑えられる
    • 専門学校に通うよりも、圧倒的に費用を抑えることができます。
    • 教材費や受験料のみで済むので、経済的な負担が軽くなります。
  • 自分のペースで学べる
    • 時間や場所に縛られずに、自分のペースで勉強を進めることができます。
    • わからない部分は、インターネットや参考書などを活用して調べることができます。

デメリット

  • 試験を合格しなくてはならない
    • 必要な知識や技術をすべて独学で習得し、合格率60~70%の試験を通過しなくてはいけません。
    • 試験勉強に多くの時間と労力を費やす必要があり、モチベーション維持も重要になります。
  • 就職活動は自力
    • ノウハウのある専門学校と異なり、情報収集にとても苦労します。
    • 場合によってはブラックな劣悪環境の店に就職することもあります。
    • 専門学校のような就職支援を受けることができないため、就職活動は自力で行う必要があります。
    • 企業によっては、専門学校卒業生よりも不利に扱われる可能性もあります。
  • 2年以上の実務が必要
    • 受験資格には「2年以上の調理の実務経験」が必要です。
    • 実務経験を積むための就職先も自力で見つける必要があります。

自分に合った取得方法の選び方

「専門学校」か「独学」か。
自分に合った取得方法は、

  • 年齢(学業と職業)
  • 費用

の2点を考慮して選ぶことが大切です。

1. 年齢

中学生以下の場合
調理師科のある高校や専修学校に進学することもできます。公立であれば、私立の専門学校よりも費用を抑えられる可能性があります。

高校生以上の場合
多くの専門学校生は、高校卒業後の進学先としています。同年代の仲間と学び、刺激を受けながらスキルアップすることができます。

飲食業以外の社会人の場合
夜間の専門学校へ通うというパターンもあります。夜間は年齢層や職業も様々で、人脈も広がります。

飲食業の社会人の場合
絶対的に独学がオススメです。2年以上の実務を経た上で、独学で試験合格を目指しましょう。

2. 経済状況

専門学校は数百万円の費用がかかる

専門学校への進学は高額です。
奨学金制度などを活用するなど、事前にしっかりとした経済的な計画を立てることが重要です。

その他のポイント

  • 将来のキャリアプランを明確にする
  • 情報収集をしっかり行う
  • 実際に学校見学や体験授業に参加してみる

調理師免許試験について【概要解説|試験内容】

受験資格:
(1)学歴 中学校卒業以上の者
(2)職歴 2年以上の調理業務に従事した者

試験内容
・全60問
・四肢択一
・マークシート方式

合格基準:
全科目の合計得点が6割以上
かつ、各科目の平均点を著しく下回らない

≫試験詳細は「調理技術技能センター

MEMO:「2年以上の調理業務」とは
下記の施設において、
週4日以上かつ1日6時間以上の勤務
【認められる】
・飲食店や旅館、簡易宿泊所
・魚介類販売業
・そうざい製造業
・学校、病院等の給食施設
【認められない】
・喫茶店営業
・販売のみの魚介類販売業
・食器洗浄、接客がメイン
・料理の盛付けや再加熱のみの業務
・製菓、製パン業務がメイン

調理師試験 科目概要

調理師試験には以下の6つの主要な科目があり、それぞれに重要なポイントがあります。

(1) 公衆衛生学

  • 概要: 公衆衛生学は、地域社会全体の健康を維持・向上させるための学問です。
  • ポイント:
    • 疾病の予防と健康の促進
    • 衛生管理と感染症対策
    • 環境衛生(空気、水、土壌の管理)
    • 健康教育と健康増進プログラム

(2) 食品学

  • 概要: 食品学は、食品の成分、構造、性質、および食品加工と保存技術に関する学問です。
  • ポイント:
    • 食品の成分とその役割(たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなど)
    • 食品の化学的、物理的性質
    • 食品加工と保存方法(冷凍、乾燥、缶詰など)
    • 食品添加物とその安全性

(3) 栄養学

  • 概要: 栄養学は、人間の健康と成長に必要な栄養素とその摂取方法を研究する学問です。
  • ポイント:
    • 栄養素の種類と機能(炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)
    • エネルギーのバランスと代謝
    • 栄養素の摂取基準と食事計画
    • 生活習慣病の予防と管理

(4) 食品衛生学

  • 概要: 食品衛生学は、食品の安全性と品質を確保するための学問です。
  • ポイント:
    • 食品の汚染源とその防止
    • 食品の衛生管理(HACCP、GMPなど)
    • 食中毒の原因と予防
    • 食品衛生法と規制

食中毒について詳しく

(5) 調理理論

  • 概要: 調理理論は、調理の科学的な原理と技術を研究する学問です。
  • ポイント:
    • 調理における物理・化学的変化
    • 調理器具とその使用法
    • 調理技術(切る、焼く、煮る、蒸す、揚げるなど)
    • 食材の選定と調理

(6) 食文化概論

  • 概要: 食文化概論は、食事の文化的背景とその歴史、地域性についての学問です。
  • ポイント:
    • 世界各地の食文化とその特徴
    • 歴史的な食文化の変遷
    • 宗教や伝統に基づく食習慣
    • 現代の食文化と食生活のトレンド

これらの科目は、調理師試験に合格するために重要な知識と技能をカバーしています。

オススメの勉強法

1. 計画的に学習する

  • 試験範囲を把握し計画的に学習する
  • 過去問や参考書で自分の理解度を確認

2. 科目ごとに対策する

  • 各科目の特徴を理解する
  • 繰り返し学習し暗記する科目
  • 参考書で理解を深める科目

3. アウトプットを意識する

  • 手書きや音読でアウトプット意識
  • アウトプットは知識を定着させる

4. 過去問を解く

  • 試験形式や出題傾向を知る
  • 時間配分や解き方のコツを身につける

5. 仲間と勉強する

  • モチベーションの維持に効果的
  • 教え合い、問題を出し合うことで理解が深まる

6. 集中できる環境を作る

  • 場所や時間帯を決め、集中できる環境を作る
  • 誘惑を排除し勉強に専念する

7. 休息をしっかりとる

  • 長時間の勉強は集中力が低下し効率が悪い
  • 適度に休息して集中力を維持する

8. 健康的な生活を送る

  • 睡眠不足や偏った食生活を避ける
  • 健康的な生活で勉強を効率的に

合格率アップのポイント

1. 早めに準備を始める

  • 試験日が近づくと焦り、実力を発揮できない
  • 早めに準備を始め、余裕を持つ

2. 基礎知識をしっかり固める

  • 応用問題を解くには、基礎知識が重要
  • 基礎知識→応用問題の順に取り組む

3. 間違えた問題は必ず復習する

  • 間違えた原因を分析し、同じ間違いを繰り返さない
  • 復習することで理解度が高まる

4. 自信を持って試験に臨む

  • 今までの努力を信じ、試験に臨む
  • 自信を持つことで実力が発揮できる

【統計データ】調理師免許の現状と傾向

調理師免許は日本の食品業界で働くための基本的な資格であり、保有者数の統計データを通じてその推移や傾向を把握することができます。

ここでは、厚生労働省の公表するデータを基に、調理師免許保有者数の推移、新規取得者数、取得方法の変化について解説します。

調理師免許保有者数の推移

スクロールできます
年度交付数
(累計)
交付数
(新規)
養成
施設
試験
合格
試験割合
1965557,74739,8901,97526,64266.79%
19751,296,138107,99017,28384,86478.59%
19852,108,26062,80420,03942,73868.05%
19952,726,18363,35222,75140,59164.07%
20013,121,34755,61019,17736,42965.51%
20023,176,96755,62020,34535,27163.41%
20033,232,73855,77120,26435,50663.66%
20043,285,92253,18420,60132,58361.26%
20053,335,98150,05920,00830,04960.03%
20063,384,04648,06518,76429,30060.96%
20073,429,50945,46318,33227,13159.68%
20083,471,46741,95817,38624,57158.56%
20093,513,98942,52216,44826,06061.29%
20103,555,67941,69015,54626,14362.71%
20113,596,04640,36716,61323,75458.85%
20123,636,25340,20716,68523,52158.50%
20133,674,90338,65017,26021,39055.34%
20143,712,89337,99016,50721,48256.55%
20153,749,82836,93515,92921,00556.87%
20163,785,29735,46915,76419,70455.55%
20173,817,77432,47713,78918,68657.54%
20183,848,38630,61213,45917,15356.03%
20193,877,42529,03913,12515,91454.80%
20203,905,71928,29413,11815,17653.64%
20213,933,84228,12312,96115,16253.91%

【累計交付数のポイント】
2021年3月末時点で約400万人
1965年の約55.7万人から大幅に増加

【新規交付数のポイント】
2001年以降、年間5万人超
近年では年間3万人弱に減少

「減少要因の考察」
少子高齢化や職業選択の多様化
「調理師は他の職業に比べて魅力的ではない」と感じる若者が増えている可能性

【取得方法のポイント】
養成施設卒業者の割合が徐々に増加
しかし、依然として過半数が独学での試験合格

受験者数と合格率の推移

年度受験者数合格者数合格率
202021,09614,81470.2%
202124,23015,89665.6%
202221,54714,09165.4%
※全国合計数と全国平均

【都道府県別】

令和4年
(2022年)
受験者数合格者数合格率
北海道1,213人968人79.8%
青森県224人127人56.7%
岩手県216人108人50.0%
宮城県386人212人54.9%
秋田県175人104人59.4%
山形県139人87人62.6%
福島県398人269人67.6%
茨城県473人295人62.4%
栃木県446人275人61.7%
群馬県271人202人74.5%
埼玉県899人590人65.6%
千葉県1,020人636人62.4%
東京都2,043人1,343人65.7%
神奈川県1,522人1,118人73.4%
新潟県325人186人57.2%
富山県126人86人68.3%
石川県206人120人58.3%
福井県169人125人74.0%
山梨県127人82人64.6%
長野県524人350人66.8%
岐阜県321人194人60.4%
静岡県632人414人65.5%
愛知県815人511人62.7%
三重県336人217人64.6%
奈良県393人180人45.8%
関西
広域連合
3,371人2,581人76.6%
鳥取県158人99人62.7%
島根県116人73人62.9%
岡山県275人165人60.0%
広島県376人224人59.6%
山口県236人185人78.4%
香川県222人126人56.8%
愛媛県217人105人48.4%
高知県120人57人47.5%
福岡県747人448人60.0%
佐賀県139人71人51.1%
長崎県295人164人55.6%
熊本県428人213人49.8%
大分県233人137人58.8%
宮崎県252人142人56.3%
鹿児島県412人221人53.6%
沖縄県551人281人51.0%
合計21,547人14,091人65.4%

※関西広域連合(滋賀、京都、大阪、兵庫、和歌山、徳島)
※神奈川県のみ年2回 上表は合計の数値

令和4年度調理師試験 都道府県別 合格率ランキング

順位合格率
ベスト5
合格率
ワースト5
1位北海道
(79.8%)
奈良県
(45.8%)
2位山口県
(78.4%)
高知県
(47.5%)
3位関西広域連合
(76.6%)
愛媛県
(48.4%)
4位群馬県
(74.5%)
熊本県
(49.80%)
5位福井県
(74.0%)
岩手県
(50.0%)

【試験合格率のポイント】

調理師免許試験の合格率は平均で60%~70%
合格率1位の北海道は約8割が受かり、最下位の奈良県では半数以上が落ちる

まとめ【板前には必須の調理師免許】

調理師免許は、食のプロとしての証

我々、板前としても必ず取得しておきたい免許です。上位資格である「ふぐ調理師免許」は板前にはなくてはなりません。

  • 調理技術
  • 食材の知識
  • 栄養学
  • 衛生管理

食に関わる幅広い知識と、
専門性を証明する国家資格です。

調理の仕事はだれでも就くことは可能ですが、「調理師」の名乗れるのは免許保持者だけであり、信頼性や転職の際にもメリットがあります。

調理師免許を取得する方法は、
専門学校を卒業する
独学で試験に合格する
という2つの方法があります。

試験の概要は
試験内容は6科目
合格点は6割以上
合格率は平均60~70%
となっています。

このブログ記事を参考に、ぜひ調理師免許取得を目指してください。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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