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【水産物の養殖とは?】 〜天然・養殖・畜養・完全養殖の違い〜

新人の板前

先輩、最近養殖魚を扱う機会が増えました。養殖と天然の違いって何なんでしょうか? いろいろ種類もあると聞いたんですけど……

先輩の板前

いい質問だね。養殖と天然の違いは簡単に言うと、育て方の違いなんだよ。自然で育つか、人間が管理するかの違いだ。

水産物の養殖は、現代の食料供給や水産資源の保護において重要な役割を果たしています。

本記事では、養殖の定義や「天然」「養殖」「畜養」「完全養殖」といった用語の違いについて解説します。

また、それぞれのメリットとデメリットに加え、天然と養殖の食味の違いについても考察します。

目次(INDEX)

養殖の基本的な定義

日本農林規格(JAS規格)において、「養殖」とは「重量の増加又は品質の向上を図ることを目的として、出荷するまでの間、給餌することにより育成されたもの」を指します。

ここで重要なのは、育成期間の長短にかかわらず、給餌によって育てられた水産物が「養殖」として分類される点です。

例えば、
・幼魚から1年間育てたもの
・漁獲後1週間だけ給餌されたもの
いずれも「養殖」として出荷されます。

天然、養殖、畜養、完全養殖の違い

「養殖」にはいくつかの種類があります。

天然

「天然」:自然の海や川などで漁獲されたもの。
これらの水産物には人間の手が加わっておらず、自然環境の中で育ったものです。

  • 長所:豊かな風味と良味
  • 短所:品質と供給が不安定

養殖

「養殖」:親魚を捕獲し、人工管理下で卵を孵化させ、出荷サイズまで育てたもの。
卵から育てたものが対象となり、完全な人間の管理下で行われます。

  • 長所:供給と品質の安定
  • 短所:天然よりも食味が劣る

畜養

「畜養」:幼魚や状態の悪い魚を捕獲し、成魚になるまで育てたもの。
畜養も養殖の一種ですが、途中から人間が管理した場合に対象となります。

  • 長所:品質改善と市場価値向上
  • 短所:漁獲に左右され供給不安定

完全養殖

「完全養殖」:養殖された魚の子供をさらに人工管理下で育成し、孫世代以降のもの。
天然資源に依存せず供給できることを意味し、より高度な養殖方法と言えます。

  • 長所:天然資源の保護と安定供給
  • 短所:高コストと環境負担

天然と養殖の食味の違い

項目天然魚養殖魚
育成
環境
自然の海や川人工的に
管理された環境
脂の
乗り
季節や環境で
大きく変動
調整でき
常に安定的
食感筋肉質で
締まりがある
柔らかく
しっとり
風味豊かな風味
独特の味わい
やや風味が薄い
品質
安定
バラつき
不安定
均一な品質

天然魚の食味

天然魚は自然の海や川で自由に泳ぎ、自然環境に応じた餌を食べて育ちます。

このため、季節や環境によって脂の乗り具合や身質に違いが出ることが多く、豊かな風味や独特の食感を持つのが特徴です。

また、海流の速い場所で育つ魚は筋肉が引き締まり、弾力のある食感になることが多いです。しかし、時期によっては脂の少ない痩せた魚が市場に出回ることもあり、安定した品質を求めるのが難しい場合もあります。

養殖魚の食味

養殖魚は餌や環境を、人工的にコントロールされて育ちます。

このため、季節を問わず、一定の品質を保つことができ、安定した脂肪分や身質が特徴です。

特に脂が乗った養殖魚は、口当たりが良く、しっとりとした食感が楽しめることが多いです。しかし、天然魚特有の風味や、豊かな味わいを求める消費者には、やや物足りなさを感じることもあります。

完全養殖のメリットとデメリット

現在では、クロマグロやウナギの完全養殖にも成功しています。
今後、より安定的な供給を目指すために課題解決が求められています。

メリット

  • 天然資源の保護:完全養殖は天然の水産資源への依存を減らし、乱獲を防止します。
  • 安定供給:人工的に管理されるため、需要に応じた安定的な供給が可能です。
  • 同一品質:管理された環境下で育てられるため、品質が均一で市場価値が高い水産物を提供できます。

デメリット

  • 莫大なコスト:完全養殖には高度な設備と管理が必要で、初期投資や維持コストが高額になります。
  • 環境汚染:養殖場からの排水や未使用飼料が環境を汚染する可能性があります。
  • 餌魚の乱獲:養殖魚の餌となる小魚の大量捕獲が、海洋生態系に悪影響を与える恐れがあります。

デメリットを解消するための手段

完全養殖のデメリットを克服するためには、以下のような手段が考えられます。

  1. 効率的な配合飼料の開発:より少ない餌で成長が促進される配合飼料の開発により、餌魚の乱獲を抑制できます。
  2. より生存率の高い飼育方法:養殖魚の生存率を向上させる技術を導入することで、生産効率を高め、コストを削減できます。

まとめ

新人の板前

今日は本当に勉強になりました。天然魚と養殖魚、それぞれの良さがあるんですね。次はその違いをしっかり考えて料理に使ってみます!

先輩の板前

そうだな。どちらを使うかは、料理やお客さんの好みによるから、食材を見極めることが大事だよ。実際に手に取って、味わいを確かめてみるといいさ。

水産物の養殖は、食料供給と水産資源の保護において重要な役割を果たしています。

天然と養殖の違いを理解し、各手法のメリットとデメリットを把握することで、持続可能な水産業の発展が期待されます。

また、プロの料理人として天然魚と養殖魚の食味の違いを理解し、消費者のニーズに応じた選択が求められます。

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この記事を書いた人

板前歴22年。
日本料理の技術と知識と心構えを高めて、
自信を持ち、豊かな板前LIFEを送ろう。

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