新人 けんた先輩、店の客席を増やすなら防火管理者が要るって聞きました。本当ですか?



本当だ。飲食店は建物全体の収容人員が30人以上だと、防火管理者を選ぶ決まりだ。



消防の資格って、難しい国家試験に受からないと取れないんじゃないですか?



試験はなく講習で取れる。乙種は1日、甲種は2日間だ。公式情報で整理しよう。
防火管理者が必要になる飲食店の条件・収容人員の数え方・甲種と乙種の違い・講習の時間と費用・オンライン受講・選任の届出を、消防法令と東京消防庁・日本防火・防災協会の公式情報(一次情報)だけで整理します。
この記事の要点
- 飲食店が入る一般的な建物は、建物全体の収容人員が30人以上なら防火管理者が必要(消防法施行令第1条の2)。介護施設などが入る建物は10人以上。ビルのテナントもそれぞれ選ぶ
- 国家試験はなく、講習で取る。乙種はおおむね5時間(1日)、甲種はおおむね10時間(2日間)。オンライン講習もある
- 延べ面積300㎡未満の建物なら乙種でよい。それ以上は甲種(テナント部分が30人未満なら乙種でよい場合あり)
- 受講料は日本防火・防災協会で甲種8,000円・乙種7,000円(2026年度)。2027年4月の講習からは甲種9,000円・乙種7,700円。修了証に有効期限はない
※2026年10月3日時点の公式情報にもとづきます。
防火管理者とは?
多くの人が出入りする建物で、火事を防ぎ、起きたときの被害を小さくするための責任者です。消防法第8条で、建物の「管理について権原を有する者」(管理権原者。建物のオーナーや、テナントのお店の経営者など)が選ぶことになっています。
防火管理者の主な仕事は次のとおりです(消防法第8条、消防法施行令第3条の2)。
- 消防計画を作り、消防署に届け出る
- 消火・通報・避難の訓練をする
- 消火器などの消防用設備の点検・整備、避難通路の管理
- 火の使い方の監督、収容人員の管理
防火管理者になる2つのルート
- 講習ルート:甲種防火管理講習か乙種防火管理講習を修了する(ほとんどの人はこちら)
- 学識経験ルート:消防職員として一定の経験がある人などは、講習なしで認められることがある(消防法施行令第3条)。東京消防庁は、安全管理者・防火対象物点検資格者・危険物保安監督者・1級建築士などで一定の条件を満たす人を例に挙げ、管轄の消防署に相談するよう案内しています
講習は、都道府県知事・消防本部(消防長)・総務大臣の登録を受けた法人が行います(消防法施行令第3条)。登録を受けた法人の1つが、一般財団法人 日本防火・防災協会です。


どんな人がなる?
講習を修了しただけでは足りません。その建物で防火管理の仕事をきちんと行える「管理的又は監督的な地位にある」人であることも条件です(消防法施行令第3条第1項)。飲食店なら、経営者や店長などが考えられます。
資格の基本情報
| 名称 | 防火管理者 (甲種・乙種) |
|---|---|
| 資格区分 | 講習で取る資格 (国家試験はない) |
| 根拠法令 | 消防法第8条 消防法施行令第3条 |
| 講習実施 | 都道府県知事・ 消防本部・ 登録を受けた法人 (日本防火・ 防災協会など) |
| 必要な店 | 建物全体の 収容人員が 30人以上 (飲食店の場合。 介護施設などが 入る建物は10人) |
| 受講資格 | 実施機関で違う (協会は中学卒業 程度の学力と 日本語の理解) |
| 講習時間 | 甲種 約10時間 乙種 約5時間 |
| 受講料 | 甲種 8,000円 乙種 7,000円 (日本防火・ 防災協会・ 2026年度) 2027年4月からは 甲種 9,000円 乙種 7,700円 |
| 合格率 | 公表なし |
| 有効期限 | なし(一部の人は 5年ごとの再講習) |
| 公式情報 | 防火管理者が 必要な防火対象物と 資格(東京消防庁 ホームページ) |
防火管理者が必要な飲食店(収容人員30人以上)
飲食店・料理店は、消防法施行令の別表第一で(三)項に当たります。(三)項の建物は、収容人員が30人以上になると防火管理者を選ばなければなりません(消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ)。
ここで大事なのは、30人を建物全体で数えることです。東京消防庁は、飲食店・店舗・ホテルなど不特定多数の人が出入りする用途がある建物について「防火対象物全体の収容人員が30人以上のもの」と案内しています。さらに、防火管理者が必要な建物では「建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要です。」としています。
つまり、お店が20席でも、入っているビル全体で30人以上なら、そのお店も防火管理者を選ぶ必要があります。
なお、同じビルに老人ホームなどの介護・福祉施設(別表第一(六)項ロ)が入っている場合は、建物全体で10人以上から必要です(消防法施行令第1条の2第3項第1号イ)。
収容人員の数え方(飲食店)
飲食店の収容人員は、次の数を足して出します(消防法施行規則第1条の3)。
- 従業員の数
- 固定式のいす席の数(長いすは、正面の幅0.5mごとに1人。端数は切り捨て)
- それ以外の客席部分(座敷など)の床面積を3㎡で割った数
たとえば、従業員5人・固定いす席25席のお店なら、それだけで30人になります。複数の用途が入るビルは、用途ごとに数えた人数を合計します(同条第2項)。数え方に迷ったら、管轄の消防署に確認しましょう。
雑居ビルでは「統括防火管理者」も必要
飲食店などが入り、管理の権原が分かれている(テナントが複数ある)建物のうち、地階を除く階数が3以上で収容人員30人以上のものは、各テナントの防火管理者とは別に、建物全体をまとめる「統括防火管理者」を協議して選びます(消防法第8条の2、消防法施行令第3条の3)。
選ばないとどうなる?
防火管理者が選ばれていないと、消防長・消防署長は選ぶよう命令できます(消防法第8条第3項)。命令に従わないと、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(同法第42条)。選任・解任の届出を怠った場合も、30万円以下の罰金または拘留と定められています(同法第44条)。



うちの店は20席だけです。ビルに入るテナントなので、関係ないですよね?



そうとは限らない。人数は建物全体で数えるから、ビルで30人以上なら必要だ。



じゃあ、同じビルのほかの店と一緒に、防火管理者を1人だけ選べばいいんですか?



いや、テナントごとに選ぶ。東京消防庁も、すべてのテナントで選任が必要としている。
甲種と乙種の違い(どちらを受ける?)
防火管理者の資格には甲種と乙種があり、どちらが必要かは建物の用途・延べ面積・収容人員で決まります(消防法施行令第3条)。飲食店(特定用途)の場合は次のとおりです。
- 乙種でよい:建物の延べ面積が300㎡未満
- 甲種が必要:建物の延べ面積が300㎡以上
- 例外:甲種が必要な建物でも、テナントが分かれていて、自分の店の部分だけで数えた収容人員が30人未満なら、そのテナントの防火管理者は乙種でよい(消防法施行令第3条第3項、消防法施行規則第2条の2の2)
甲種の修了者は、建物の規模に関係なく、乙種の建物でも防火管理者になれます。日本防火・防災協会も、受講すべき講習の種類は事業所を管轄する消防本部・消防署に確認するよう案内しています。
講習の内容と時間
講習で学ぶことは消防法施行規則第2条の3で決まっていて、甲種と乙種で科目は同じです。乙種は、その「基礎的な」内容を短い時間で学びます。
- 防火管理の意義と制度
- 火気の使用・取扱いの監督
- 消防用設備等の点検・整備、避難・防火上必要な構造と設備の維持管理
- 消火・通報・避難の訓練
- 防火管理に必要な教育
- 消防計画の作成


講習時間は、甲種の新規講習がおおむね10時間、乙種がおおむね5時間です(同条)。東京消防庁は「甲種防火管理者の資格は2日間、乙種防火管理者の資格は1日の講習を修了することで取得できます。」と案内しています。
乙種を持っている人が甲種を取るときも、短くはなりません。日本防火・防災協会は、乙種の資格では科目免除はできず、全科目の受講が必要としています。
効果測定で落ちることはある?合格率は?
東京消防庁・日本防火・防災協会の講習では、最後に「効果測定」があります。ただし、合格率や合格ラインは公表されていません。日本防火・防災協会のオンライン講習では、受講期間内に最後の効果測定まで終えないと修了にならず、受講料も返金されません。



甲種と乙種で迷ったら、講習が長いほうの甲種を取っておけば安心ですよね?



甲種ならどの規模の建物でもなれる。ただ、どちらが要るかは消防署で確かめろ。



最後の効果測定に落ちたらどうしようかと心配です。合格率って高いんですか?



合格率は公表されていない。講義をきちんと聞くことが、いちばんの準備だ。
講習の申込み方と日程(対面・オンライン)
講習の申込み先は、大きく分けて2つです。全国共通の試験日のようなものはなく、それぞれが年間を通じて日程を公開しています。
- 日本防火・防災協会:対面型(会場)とオンライン型。インターネットで申し込む。オンライン型の支払いはコンビニかクレジットカードのみ。防火管理者になる予定がなくても受講できる
- 各地の消防本部(消防局):地域の消防本部が行う講習。申込方法や受講できる人は地域で違う
東京消防庁の講習の例
東京消防庁の講習は、東京都内(稲城市を除く)の建物や事業所で選任される人に限り申し込めます。申込みは電子申請か消防署の窓口で、講習会場や電話では申し込めません。定員になり次第締め切られます。
- 甲種:防災管理とセットの「防火・防災管理新規講習」(対面2日間、またはオンライン講習+実技講習1日)
- 乙種:「乙種防火管理講習」(対面1日)
オンラインで取るには
日本防火・防災協会のオンライン型講習は、修了証の取得まで完全にオンラインです。主な条件は次のとおりです。
- 受講期間内は24時間、分けて受講できる(甲種は受講時間10時間・期間12日間、乙種は5時間・7日間)
- カメラ付きのパソコン・タブレット・スマートフォンが必要
- 申込みに顔写真付きの本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・在留カードのどれか)が必要
- 申込みが確定したらキャンセルできない。実技はない
- 修了証はPDFで、受講期間の終了後6日(土日祝を除く)以内にメールで案内される
協会は、対面型とオンライン型で修了証の効力に違いはないとしています。対面型は、会場の最終日にカード型の修了証が渡されます。
受講料(費用)はいくら?
費用は講習を行う機関で違います。2026年10月3日時点で確認できた金額は次のとおりです(税込)。
| 協会 | 日本防火・防災協会 甲種 8,000円 乙種 7,000円 (2026年度。 対面・オンライン とも同額) |
|---|---|
| 東京 | 東京消防庁 (教材費のみ) 甲種(防火・防災 管理新規)7,000円 乙種 2,500円 |
日本防火・防災協会は、令和9年(2027年)4月1日実施の講習から受講料を改定し、甲種9,000円・乙種7,700円にすると案内しています(2026年10月に確認した協会のお知らせ)。東京消防庁の金額は令和7年4月の講習からのもので、教材は東京防災救急協会のオンラインショップで事前に買います(オンライン受講は別に配送代)。ほかの地域の消防本部の金額は、それぞれの案内で確認してください。
取得したあと:選任届・消防計画・再講習
選ばれたら消防署に選任届
講習を修了しただけでは、防火管理者にはなりません。管理権原者(オーナーや経営者)が防火管理者を選んだら、遅滞なく所轄の消防長または消防署長に届け出ます(消防法第8条第2項)。届出書には、修了証など資格を証明する書面を添えます(消防法施行規則第3条の2)。辞めさせたときも届け出が必要です。
オンライン講習のPDFの修了証は、日本防火・防災協会によるとA4の紙に印刷して消防署に出します。
消防計画と年2回の訓練
防火管理者は消防計画を作り、消防署に届け出ます(消防法施行令第3条の2)。飲食店などの特定用途の建物では、消火訓練と避難訓練を年2回以上行い、前もって消防機関に通報します(消防法施行規則第3条第10項・第11項)。
有効期限はない。再講習が必要な人だけ5年ごと
東京消防庁は「防火管理講習修了証や防災管理講習修了証に有効期限はありません。」と案内しています。
ただし、収容人員300人以上の特定用途の建物で選ばれている甲種防火管理者は、甲種防火管理再講習(おおむね2時間)を受けます(消防法施行規則第2条の3)。東京消防庁の案内では、期限は修了日以後の最初の4月1日から5年以内などです。選任されていない人は、再講習を受ける必要はありません。
また、テナントが分かれた建物で、自分の店の部分だけで数えた収容人員が30人未満(乙種でもよい部分)の防火管理者は、再講習の対象から除かれています(消防法施行規則第2条の3第1項・第2条の2の2)。
修了証をなくしたら?
講習を受けた機関に再交付を申し込みます。日本防火・防災協会は、東京消防庁やほかの消防本部が出した修了証の再発行はしていません。東京消防庁の講習の修了者は、都内(稲城市を除く)の消防署などで申請します。
食品衛生責任者との違い
どちらも飲食店を開くときに耳にする「講習で取る資格」ですが、根拠の法律も役割も別です。片方を持っていても、もう片方の代わりにはなりません。
- 防火管理者:火災予防の責任者(消防法)。建物全体の収容人員30人以上などの場合に選び、消防署に届け出る
- 食品衛生責任者:衛生管理の責任者(食品衛生法施行規則)。営業許可や届出が必要なお店で定め、保健所の手続きで扱う


よくある質問
Q. 小さな居酒屋でも防火管理者は必要ですか?
A. 一般的な建物なら、建物全体の収容人員が30人以上で必要です。お店の席が少なくても、ビル全体で30人以上なら対象になります。
Q. アルバイトでも防火管理者になれますか?
A. 法令の条件は、講習の修了に加えて、その建物で「管理的又は監督的な地位にある」ことです(消防法施行令第3条第1項)。立場が当てはまるかは管轄の消防署で確認してください。
Q. オンラインだけで資格を取れますか?
A. 日本防火・防災協会のオンライン型講習なら、申込みから修了証の取得までオンラインです。修了証の効力は対面型と同じと案内されています。
Q. 講習を受けたその日に修了証をもらえますか?
A. 対面型は、講習の最終日に修了証が渡されます(日本防火・防災協会・東京消防庁)。オンライン型は受講期間の終了後にPDFで受け取ります。
Q. まだ店を開く予定がなくても受講できますか?
A. 日本防火・防災協会の講習は、すぐに管理者になる予定がなくても受講できます。東京消防庁の講習は、都内で選任される人に限られます。
Q. 甲種と乙種、どちらを受ければいいですか?
A. 建物の用途・延べ面積・収容人員で決まります。管轄の消防署で確認してください。甲種ならどの規模の建物でもなれます。
Q. 資格に有効期限はありますか?
A. ありません。ただし、収容人員300人以上の特定用途の建物で選ばれた甲種防火管理者は、再講習を受けます。
Q. 講習の服装はスーツですか?
A. 東京消防庁は「スーツで来ていただく必要はありません。」としています。体温調節ができる服装が勧められています。
公式情報
- 消防法(e-Gov法令検索)
- 消防法施行令(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則(e-Gov法令検索)
- 防火管理者が必要な防火対象物と資格(東京消防庁ホームページ)
- 防火管理講習・防災管理講習(東京消防庁ホームページ)
- 講習費用について(東京消防庁ホームページ)
- 再講習の受講期限について(東京消防庁ホームページ)
- 防火・防災管理講習(日本防火・防災協会)
- 対面型とオンライン型の比較表(日本防火・防災協会)
この記事は、総務省消防庁・東京消防庁・日本防火・防災協会とは関係なく独自にまとめたものです。必要な資格の種類・講習の日程・費用は、必ず管轄の消防署や講習の実施機関で確認してください。
まとめ
- 飲食店が入る一般的な建物は、建物全体の収容人員が30人以上なら、テナントごとに防火管理者を選ぶ(介護施設などが入る建物は10人以上)
- 試験はなく講習で取る。乙種はおおむね5時間、甲種はおおむね10時間。オンライン講習もある
- 延べ面積300㎡未満の建物なら乙種でよい。どちらが必要かは管轄の消防署で確認する
- 選んだら消防署に選任届。消防計画を作り、消火・避難訓練は年2回以上
- 修了証に有効期限はない。収容人員300人以上の特定用途の建物の甲種防火管理者は再講習を受ける



講習を受けて修了証をもらえば、それでもう防火管理者になれるんですよね。



いや、オーナーなどに選ばれてはじめてなる。選んだら消防署への届出も要るぞ。



選ばれたら、消防計画を作ったり、年2回の訓練をしたりもするんですね。



そうだ。食品衛生責任者や厨房の安全の記事もあるから、続けて読んでくれ。
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